Quantcast
Channel: 文庫で読む文学全集
Viewing all articles
Browse latest Browse all 714

かもめ

$
0
0

 「かもめ」 チェーホフ作 沼野充義訳 (集英社文庫)


 作家志望の青年と、女優志望の少女の、愛の悲喜劇です。
 チェーホフの四大戯曲の最初の作品で、古典的名作です。

 現在、集英社文庫版のほか、岩波文庫、新潮文庫などから出ています。
 私は、集英社文庫の沼野訳が、一番分かりやすく感じました。


かもめ (集英社文庫)

かもめ (集英社文庫)

  • 作者: チェーホフ
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2012/08/21
  • メディア: 文庫



 岩波文庫版の浦訳も、とても分かりやすかったです。
 新潮文庫版は、プーシキンの名訳で知られる神西訳。根強いファンが多い。


かもめ (岩波文庫)

かもめ (岩波文庫)

  • 作者: チェーホフ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2010/01/16
  • メディア: 文庫



かもめ・ワーニャ伯父さん (新潮文庫)

かもめ・ワーニャ伯父さん (新潮文庫)

  • 作者: チェーホフ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1967/09
  • メディア: 文庫



 女優アルカージナは、作家トリゴーリンと恋仲。
 アルカージナの息子トレープレフは、女優の卵ニーナと恋仲。
 と思ったら、ニーナはトリゴーリンと恋仲になり、トレープレフから離れていきます。

 一方、トレープレフのことを、マーシャという娘が片思い。
 そのマーシャを、メドヴェジェンコという教師が片思いしています。

 人間関係を整理しようとしたのに、かえってなんだか、ごちゃごちゃしてきました。
 いったい誰が主人公なのか、いつまでたっても、見えてきません。
 ただ、人間関係の中心に、作家志望のトレープレフがいるらしい。

 さて、この戯曲の魅力は、会話の妙にあります。
 一見、かみ合ってないようで、かみ合っている。
 また、かみ合っているようで、かみ合っていない。

 それは、そのまま登場人物の、人間関係にも言えることです。
 そして、この劇全体に、不思議な雰囲気を与えています。

 特に、最後の場面の、「私はかもめ」というニーナの言葉。
 単純ですが、意味深なセリフです。そして、有名です。

 チェーホフを読んだことのなかった私も、このセリフを知っていました。
 ただし、ロシア宇宙飛行士の言葉として、知っていたのですが。

 結末は、どう見ても悲劇。
 しかし、作者チェーホフは、この作品を喜劇として扱っています。

 ところで、今年9月の「100分de名著」で、「かもめ」を取り上げていました。
 このうすっぺらい本に、100分もかけて何を論じるのかと思い、見なかった。

 でも、この作品を読んだ今なら、分かります。
 ちょっとした言葉に、語りつくせないほどの、深い意味が感じられます。
 番組では、限られた時間で何を論じたのか、今更ながら気になります。

 さいごに。(昇仙峡へもみじ狩り)

 日曜日に、家族3人で、山梨県の昇仙峡へ行ってきました。
 紅葉は見ごろを過ぎたと聞いていましたが、とてもきれいでした。

 ロープウェイで、山頂のパワースポットへ行くと、予想以上の人ごみ。
 私も、絶景「浮き富士」から、パワーをもらいました。
 しかし、帰りの運転でパワーを使い果たしました。道を間違えてしまって。

Viewing all articles
Browse latest Browse all 714

Trending Articles