「八月の光」 フォークナー作 加島祥造訳 (新潮文庫)
無法者ジョー・クリスマスを中心に、南部の因習に満ちた世界を描いた作品です。
この小説も、ジェファソンを舞台にしています。作者の代表作の一つです。
新潮文庫から出ています。2000年に改版が出て、読みやすくなっています。
初版は1967年。古いですが、フォークナーにしては、分かりやすかったです。
捨てられた身重の娘リーナが、相手の男を探して、ジェファソンにやって来ました。
相手は見つからず、バイロンという真面目な青年の世話を受けるようになります。
リーナは、バイロンの話から、相手が酒の密売人ブラウンであることを知りました。
その日、大きな火事と殺人事件がありましたが、ブラウンが関わっていたのです。
犯人探しに千ドルの賞金が出されると、ブラウンは保安官のもとに出頭しました。
そしてブラウンは、犯人がジョー・クリスマスであることを告げたのです。
クリスマスとは、いったい何者か?
事件の現場では、いったい何が起こったのか?
物語は、ジョー・クリスマスを中心に、様々な人を巻き込みながら進行します。
そして、その結末は・・・
クリスマスを中心に読むか、リーナを中心に読むかで、印象が変わる作品です。
私は、リーナが物語の枠を作り、クリスマスがその中心にいるように感じました。
しかし、解説によると、フォークナーは、リーナを中心に描き始めたようです。
ところが、クリスマスのエピソードに、途中から力を入れすぎてしまったらしい。
それによって、物語は深みが増し、重層的な読み方ができるようになりました。
クリスマス=キリスト説や、リーナ=地母神説などが、あるそうです。
では、私はというと、リーナに恋したバイロンの視点で、読んでいました。
バイロンの優しさが、この残虐な物語を、ぎりぎりの所で救っていると思います。
文章は分かりやすくありません。現在のシーンと回想シーンが入り混じっています。
語り手はちょくちょく変わり、場面はあちこちに飛びます。
また、登場人物の頭の中の言葉が突如ゴシック体で現れ、話を遮ってしまいます。
これを、「必殺ゴシック攻め」と呼びましょう。原文ではイタリック体ですが。
様々なエピシードが複雑にもつれ合いながら、結末へなだれ込みます。
とてもフォークナーらしい作品でした。
さて、フォークナーといえば、「アブサロム、アブサロム!」を忘れてはいけない。
この作品は、2011年に岩波文庫から新訳が出ました。楽しみです。
さいごに。(ベーコンを買わない理由)
娘も私も、ベーコンが大好きです。
でも、うちでは、なかなかベーコンを買ってもらえません。
妻いわく。「安いベーコンは、体に悪いものが使われているから買わない。」
「良いベーコンは、高いから買わない。」とのこと。