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八月の光

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 「八月の光」 フォークナー作 加島祥造訳 (新潮文庫)


 無法者ジョー・クリスマスを中心に、南部の因習に満ちた世界を描いた作品です。
 この小説も、ジェファソンを舞台にしています。作者の代表作の一つです。

 新潮文庫から出ています。2000年に改版が出て、読みやすくなっています。
 初版は1967年。古いですが、フォークナーにしては、分かりやすかったです。


八月の光 (新潮文庫)

八月の光 (新潮文庫)

  • 作者: フォークナー
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1967/09/01
  • メディア: 文庫



 捨てられた身重の娘リーナが、相手の男を探して、ジェファソンにやって来ました。
 相手は見つからず、バイロンという真面目な青年の世話を受けるようになります。

 リーナは、バイロンの話から、相手が酒の密売人ブラウンであることを知りました。
 その日、大きな火事と殺人事件がありましたが、ブラウンが関わっていたのです。

 犯人探しに千ドルの賞金が出されると、ブラウンは保安官のもとに出頭しました。
 そしてブラウンは、犯人がジョー・クリスマスであることを告げたのです。

 クリスマスとは、いったい何者か?
 事件の現場では、いったい何が起こったのか?

 物語は、ジョー・クリスマスを中心に、様々な人を巻き込みながら進行します。
 そして、その結末は・・・  

 クリスマスを中心に読むか、リーナを中心に読むかで、印象が変わる作品です。
 私は、リーナが物語の枠を作り、クリスマスがその中心にいるように感じました。

 しかし、解説によると、フォークナーは、リーナを中心に描き始めたようです。
 ところが、クリスマスのエピソードに、途中から力を入れすぎてしまったらしい。

 それによって、物語は深みが増し、重層的な読み方ができるようになりました。
 クリスマス=キリスト説や、リーナ=地母神説などが、あるそうです。

 では、私はというと、リーナに恋したバイロンの視点で、読んでいました。
 バイロンの優しさが、この残虐な物語を、ぎりぎりの所で救っていると思います。

 文章は分かりやすくありません。現在のシーンと回想シーンが入り混じっています。
 語り手はちょくちょく変わり、場面はあちこちに飛びます。

 また、登場人物の頭の中の言葉が突如ゴシック体で現れ、話を遮ってしまいます。
 これを、「必殺ゴシック攻め」と呼びましょう。原文ではイタリック体ですが。

 様々なエピシードが複雑にもつれ合いながら、結末へなだれ込みます。
 とてもフォークナーらしい作品でした。

 さて、フォークナーといえば、「アブサロム、アブサロム!」を忘れてはいけない。
 この作品は、2011年に岩波文庫から新訳が出ました。楽しみです。


アブサロム、アブサロム!(上) (岩波文庫)

アブサロム、アブサロム!(上) (岩波文庫)

  • 作者: フォークナー
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2011/10/15
  • メディア: ペーパーバック



 さいごに。(ベーコンを買わない理由)

 娘も私も、ベーコンが大好きです。
 でも、うちでは、なかなかベーコンを買ってもらえません。

 妻いわく。「安いベーコンは、体に悪いものが使われているから買わない。」
 「良いベーコンは、高いから買わない。」とのこと。

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