「イリアス(上)」 ホメロス作 松平千秋訳 (岩波文庫)
トロイアにギリシア勢が攻め寄せた、トロイア戦争の10年目を描いた叙事詩です。
紀元前8世紀頃にホメロスによって作られ、紀元前6世紀頃に文字化されました。
岩波文庫から出ています。訳は1992年で、比較的新しいため、読みやすいです。
全24歌から成り、それぞれの歌にはタイトルと梗概があるため、理解しやすいです。
ギリシア勢がトロイアに攻め寄せて10年目のことです。
総帥アガメムノンと、第一の英雄アキレウスの間に、深刻な確執が生じました。
このときからアキレウスは、戦線を離脱してしまいました。
アキレウス抜きで、ギリシア軍は総攻撃をしかけましたが・・・
アガメムノン、ディオメデス、アイアス、オデュッセウス、アキレウス!
プリアモス、パリス、ヘレネ、アイネイアス、ヘクトル!
古代ギリシアの、憧れの英雄たちが続々と登場し、生き生きと描かれています。
3000年前の戦闘の様子を、間近で見ているような臨場感があります。
ただし、正直言って最初は、英雄たちが想像とだいぶ違ったので戸惑いました。
ギリシア軍の英雄たちは、思ったよりも人間らしい。というより、子供っぽい。
冒頭は、アキレウスの怒りから始まります。当然トロイア軍に怒っているのか?
いえいえ、味方の総帥アガメムノンに怒っているのです。
しかも、アガメムノンとアキレウスの確執の原因は、一人の女の取り合いだし。
アガメムノンは権威にものをいわせ女を奪い、アキレウスは母親に泣きつくし。
その一方で、断然カッコいいのが、トロイア第一の英雄で王子のヘクトルです。
上巻に限ると、第六歌と第七歌におけるヘクトルの場面が、最大の読みどころ。
トロイアの滅亡を予感しながらも、その国を守るために献身する男。
妻と子を心配しながらも、敵方の猛者アイアスと命をかけて戦い抜く男。
神々に定められた宿命を、人間は決して変えることができません。
それでも、その宿命を受け入れた上で全力を尽くす。そういう姿にしびれます。
上巻の最後でヘクトルが岩を投げて、とうとうギリシア軍の防壁を破りました。
窮地に立たされたギリシア軍。しかし、第一の英雄アキレウスは眠ったまま。
ギリシア軍はどうなるか? アキレウスはいつ奮起するのか?
展開は知ってはいるけど、下巻を読むのが楽しみで、ワクワクしています。
ところで、上の巻末には、丁寧な解説が付いていました。
当時の詩人たちのことや、ホメロスのことなどが、分かってありがたいです。
ホメロスの叙事詩の解説本に、「ホメロスを楽しむために」があります。
時々読み返して、頭の中を整理しています。
さいごに。(今年はおじさん先生)
新学期が始まりました。娘のクラス担任は、初めて男の先生になりました。
好きな言葉が「お替わり自由」だそうです。面白そうな先生です。
しかし、娘はおじさん先生に対する免疫がないので、少し戸惑っています。
それでも、仲の良い友達と同じクラスになったので、ほっとしています。