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イリアス1

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 「イリアス(上)」 ホメロス作 松平千秋訳 (岩波文庫)


 トロイアにギリシア勢が攻め寄せた、トロイア戦争の10年目を描いた叙事詩です。
 紀元前8世紀頃にホメロスによって作られ、紀元前6世紀頃に文字化されました。

 岩波文庫から出ています。訳は1992年で、比較的新しいため、読みやすいです。
 全24歌から成り、それぞれの歌にはタイトルと梗概があるため、理解しやすいです。


イリアス〈上〉 (岩波文庫)

イリアス〈上〉 (岩波文庫)

  • 作者: ホメロス
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1992/09/16
  • メディア: 文庫



 ギリシア勢がトロイアに攻め寄せて10年目のことです。
 総帥アガメムノンと、第一の英雄アキレウスの間に、深刻な確執が生じました。

 このときからアキレウスは、戦線を離脱してしまいました。
 アキレウス抜きで、ギリシア軍は総攻撃をしかけましたが・・・

 アガメムノン、ディオメデス、アイアス、オデュッセウス、アキレウス!
 プリアモス、パリス、ヘレネ、アイネイアス、ヘクトル!

 古代ギリシアの、憧れの英雄たちが続々と登場し、生き生きと描かれています。
 3000年前の戦闘の様子を、間近で見ているような臨場感があります。

 ただし、正直言って最初は、英雄たちが想像とだいぶ違ったので戸惑いました。
 ギリシア軍の英雄たちは、思ったよりも人間らしい。というより、子供っぽい。

 冒頭は、アキレウスの怒りから始まります。当然トロイア軍に怒っているのか?
 いえいえ、味方の総帥アガメムノンに怒っているのです。

 しかも、アガメムノンとアキレウスの確執の原因は、一人の女の取り合いだし。
 アガメムノンは権威にものをいわせ女を奪い、アキレウスは母親に泣きつくし。

 その一方で、断然カッコいいのが、トロイア第一の英雄で王子のヘクトルです。
 上巻に限ると、第六歌と第七歌におけるヘクトルの場面が、最大の読みどころ。

 トロイアの滅亡を予感しながらも、その国を守るために献身する男。
 妻と子を心配しながらも、敵方の猛者アイアスと命をかけて戦い抜く男。

 神々に定められた宿命を、人間は決して変えることができません。
 それでも、その宿命を受け入れた上で全力を尽くす。そういう姿にしびれます。

 上巻の最後でヘクトルが岩を投げて、とうとうギリシア軍の防壁を破りました。
 窮地に立たされたギリシア軍。しかし、第一の英雄アキレウスは眠ったまま。

 ギリシア軍はどうなるか? アキレウスはいつ奮起するのか?
 展開は知ってはいるけど、下巻を読むのが楽しみで、ワクワクしています。

 ところで、上の巻末には、丁寧な解説が付いていました。
 当時の詩人たちのことや、ホメロスのことなどが、分かってありがたいです。

 ホメロスの叙事詩の解説本に、「ホメロスを楽しむために」があります。
 時々読み返して、頭の中を整理しています。


ホメロスを楽しむために (新潮文庫)

ホメロスを楽しむために (新潮文庫)

  • 作者: 阿刀田 高
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2000/10/30
  • メディア: 文庫



 さいごに。(今年はおじさん先生)

 新学期が始まりました。娘のクラス担任は、初めて男の先生になりました。
 好きな言葉が「お替わり自由」だそうです。面白そうな先生です。

 しかし、娘はおじさん先生に対する免疫がないので、少し戸惑っています。
 それでも、仲の良い友達と同じクラスになったので、ほっとしています。

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