「トロイア戦争全史」 松田治 (講談社学術文庫)
様々な神話伝説をつなぎ合わせて、トロイア戦争の全貌を復元した物語です。
著者が死の直前、闘病生活の中、最後の力を振り絞って書き上げた著書です。
講談社学術文庫から1000円で出ていましたが、現在は品切れです。
アマゾンでは驚くほどの高値なので、図書館で借りることをオススメします。
トロイア戦争をまとめた本はいくつかあります。
しかしこの本ほど詳しく、しかも分かりやすい本は、ほかに見当たりません。
トロイア戦争は、様々な神話で語られ、多くのヴァージョンがあります。
いろいろありすぎて、なかなか一つにまとめることは困難です。
「本書は、これら古典群の記述をジグソーパズルを組み上げるように綴り合
わせ、発端から終焉に至るまで、戦争の推移と折々のエピソードを網羅して、
その全貌を描いた物語である。」(紹介文から)
死んだアキレウスは、ある時息子の枕元に立ち・・・
死んだヘクトルは、ある時アイネイアスの夢に現れ・・・
こういう話は、この本で初めて知りました。
あらゆるエピソードを収集して全144項目。かゆいところに手が届きます。
トロイアが水没(!)する場面まで、時系列で丁寧に描かれています。
これだけ多くのエピソードが、一つの流れのある物語にまとめられています。
トロイア戦争の物語として読んでも面白いです。
また、トロイア戦争事典として使うこともできます。
著者の松田治は、2006年に亡くなった西洋古典学者です。
「トロイア戦記」「ヘレネー誘拐」「トロイア落城」等を翻訳しています。
阿刀田高の「新トロイア物語」は面白くて興味深い小説です。吉川栄治賞。
彼の「ホメロスを楽しむために」は、何度も紹介したすばらしい解説書です。
さいごに。(妹の避難所生活)
幸い妹の避難所は、物資が比較的行き届いているようです。
何か欲しい物があるかと聞いたところ、特にないということでした。
それでも、共同生活が長くなるとストレスがたまるでしょう。
しかも、まだ余震が続いているというし・・・