「親和力」 ゲーテ作 柴田翔訳 (講談社文芸文庫)
中年の理想的な夫婦を中心に、四人が繰り広げる四角関係の恋愛小説です。
ゲーテ晩年の傑作で、深遠な内容を含んでいます。
この傑作が、文庫では講談社文芸文庫からしか出ていません。
訳は予想以上に分りやすくて、内容的にも実に面白かったです。
物語の主人公は、富裕な男爵エードゥアルトと、その妻シャルロッテです。
お互いにとても愛し合っていて、落ち着いた静かな生活を営んでいます。
そこへ、夫エードゥアルトの親友の大尉が、迎えられました。
また、妻シャルロッテの姪オッティーリも、呼び寄せられました。
四人で、共同生活をしていくうちに・・・
この作品は、あまり日本では知られていないと思います。
実際、翻訳も少ないです。
しかし、予想以上に面白い物語でした。結末も劇的でした。
私的には、「ウェルテル」や「マイスター」以上に良かったです。
ところで「親和力」とは当時の科学用語で、物質と物質が結合する力のこと。
第一部の第四章で、詳しく考察されています。
例えば、「物質AB」と「物質CD」がぶつかり、A・B・C・Dに分かれる。
その後、親和力が働いて、「物質AD」と「物質BC」に、再結合されます。
このことは、人間関係にも言えます。
「エードゥアルト+シャルロッテ」の夫婦に、他の二人が合流したら?
気の合う男同士・女同士が引き合って、夫婦生活を乱すのではないか。
「エードゥアルト+大尉」対「シャルロッテ+その姪」という具合に。
しかし、事態はまったく予想外の方向へ進展していきます。
四人はそれぞれの考えに従って、事態を打開しようとしますが・・・
そして、赤ん坊に現れた不思議な刻印の意味は?
また、途中で挿入される奇譚の表す意味は?
様々な謎とともに、物語は悲劇的な結末へ、静かに進んでいきます。
(これらの謎の答えは、訳者解説で充分に示唆されています。)
ところで私は、めったなことでは講談社文芸文庫を買いません。
理由は、値段が高すぎるから。
だいたい適正価格の倍ぐらいという印象です。(あくまで個人的印象)
「親和力」は、450ページほどで、1575円でした。
もちろん、この本を買って損したとは、まったく思いません。
しかし、せめて1000円を切ってくれたら、もっと人に勧めやすいのですが。
あの、のっぺらぼうのような表紙も、私はあまり気に入りません。
しかも、日焼けをすると変色が目立つのです。
ちなみに、講談社文芸文庫で紹介した本は、他では読めないものばかりです。
「ロード・ジム」→ http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2011-03-21
「焼け跡のイエス」→ http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2012-09-20
「暗い絵」→ http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2012-09-21
「桜島」→ http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2012-09-30
さいごに。(セミ取り)
100均で買った虫取り網を持って、娘と公園にセミ取り出かけました。
まさか、娘に捕まるようなセミはいないだろうと、思ったのですが・・・
なんと、娘は二匹捕まえました。セミは油断していたのか、愚かだったのか。
捕まえたくせに、娘はセミを怖がっているので、すぐに逃がしてあげました。