「ローマとギリシアの英雄たち」 阿刀田高 (新潮文庫)
「プルターク英雄伝」のうち特に有名な人物の章を、分かりやすく解説した本です。
阿刀田の古典解説シリーズ(?)の1冊です。
一昨年2011年に文庫化されました。新潮文庫です。
<黎明篇>と<栄華篇>の二分冊で、この順番で読むのが正攻法です。
しかし、正直に言って、<栄華篇>の方がはるかに面白かったです。
登場する人物は、アレクサンドロス、カエサル、ポンペイウス、アントニウス・・・
<栄華篇>だけ読むのも「あり」かな、と思います。

ローマとギリシャの英雄たち 黎明篇―プルタークの物語 (新潮文庫)
- 作者: 阿刀田 高
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2011/06/26
- メディア: 文庫

ローマとギリシャの英雄たち 栄華篇―プルタークの物語 (新潮文庫)
- 作者: 阿刀田 高
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2011/06/26
- メディア: 文庫
プルターク英雄伝は、「対比列伝」とも言われ、100年前後にできた書物です。
古代ローマとギリシアの英雄の人生が、二人ずつ対比されながら描かれています。
その中から、特に興味深い人物を選び、分かりやすく解説したのが本書です。
対比にはそれほどこだわらず、つまらない人物はばっさり省略しています。
原典の雑多なエピソードから、興味深いものだけを抽出してまとめられています。
また逆に、プルタークの説明で不足する部分は、著者自身が補っています。
例えば、アレクサンドロスについて。
樽の哲人ディオゲネスに会った有名なエピソードが、ちゃんと補われています。
ペルシャ軍との戦いの場面は、ちゃっかり自分の小説を引用して補っています。
ちなみに、引用した小説は、「獅子王アレクサンドロス」。(読んでみたい!)
講談社文庫から出ていましたが、しかし現在は品切れ。
カエサルの章からは、「ローマ皇帝伝」と内容がかぶります。
「ローマ皇帝伝」 → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2013-10-21
しかし本書では、「皇帝伝」では分からなかった流れが、とてもよく分かります。
ルビコン渡河、ポンペイウスとの戦い、クレオパトラとの愛、暗殺の場面。
阿刀田流の味付けがなされながら、とても分かりやすく語られています。
カエサル暗殺の場面は、ブルトゥスやアントニウスの立場からも描かれています。
重層的な記述によって、当時の込み入った事情が、うまくまとめられています。
「ブルトゥス、お前もか」の名言は、「英雄伝」では省かれているのですね。
この言葉はやはり、言ったことにしてほしいです。
これに続くポンペイウス、ブルトゥス、アントニウスの章も、読み応えがあります。
やはり、カエサルとその仲間の時代が、一番面白いですね。
さて、プルタークは、「ローマ皇帝伝」のスエトニウスと、ほぼ同時代に生きた人。
当時、ローマは全盛期を迎えようとしていました。
スエトニウスがローマ人であったのに対し、プルタークはギリシア人。
そして彼は、「最後のギリシャ人」と言われたそうです。
実際、プルタークのあと、ギリシャ語の重要作品は、ほとんど出ていないようです。
「プルターク英雄伝」の全訳は、岩波文庫から出ていましたが、古くて入手困難。
潮文庫から全8巻で出ていたものは、名訳で知られていましたが、やはり入手困難。
現在手に入るのは、ちくま文庫から上中下三分冊で出ている本。ただし、抄訳です。
原典は雑多で、どうでもいい人物も含まれているから、抄訳でいいかもしれない。
さいごに。(マツコデラックス)
娘に、「マツコデラックスって、何?」と聞かれて、「知らん」と言ったら、
「どうして大人なのに知らないの?」と言われました。そう言われてもねえ・・・
クラスの友達で、知らなかったのは、うちの娘だけだったのだそうです。
慌てて調べましたが、まさか芸人さんの名前だったとは。