「詐欺師フェーリクス・クルルの告白」 トーマス・マン作 岸美光訳 (古典新訳文庫)
詐欺師であるフェーリクスが、自分の半生を語った告白体の教養小説です。
マンの遺作で、惜しくも未完に終わりました。

詐欺師フェーリクス・クルルの告白〈上〉 (光文社古典新訳文庫)
- 作者: トーマス マン
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2011/08/10
- メディア: 文庫
ある日フェーリクス少年は、父親に連れられて、人気歌手の楽屋を訪ねました。
しかし、化粧を落としたその男は、先ほど観客を魅了した歌手とはまるで別人。
男のあまりにも醜い姿に、フェーリクスは愕然としました。
そして、演じることや、だますことについて、考えさせられました。
その後、クルル一家は破産。父は自殺。全てを失い、家族は一から出直します。
フェーリクスはパリへ向かい、一流ホテルで働き始めます。
ここまで、やや拍子抜け。というのも、ちっとも詐欺師ではないのです。
ホテルマンとして働くフェーリクスは、誠実そのものです。
ところが、ある金持ちの女流作家との出会いによって・・・
また、青年貴族ヴェノスタ侯爵に出会うと・・・
しだいにクルルの、演じる能力が開花していきます。彼は言います、
「人は着ている服次第ですよ、・・・服は着ている人次第。」(下P101)
物語は、舞台がパリに移ってから、本当に面白くて面白くて。
一度読み始めたら、なかなか本を置くことができません。
しかし、残念なことに、マンの死で中断。未完に。
完成していたら、これこそがマンの最高傑作になっていたでしょう。
教養小説でありながら、詐欺師を主人公にしているところが実に面白い。
マンの頭の中にあった続編は、いったいどのようなものだったのだろう。
さいごに。(学級閉鎖)
娘のクラスはインフル感染者が10人に達して、学級閉鎖になりました。
うちの子はA型にもB型にも感染したので、もう大丈夫(?)なのですが。