「白鯨」2 メルヴィル作 八木敏雄訳 (岩波文庫)
巨大な白鯨を追うエイハブ船長と、彼が指揮するピークオッド号の悲劇的な物語です。
アメリカ文学の古典中の古典で、様々な解釈が可能な象徴的な小説です。
オススメは岩波文庫。2004年の新訳です。3月に一度紹介しました。
三分冊で、計1200ページ。このたび、ようやく読み終わりました。
白鯨への復讐に執念を燃やす船長エイハブ。彼は、わが身の不死を半ば信じています。
エイハブをいさめる一等航海士スターバック。彼は、わが身の破滅を予感しています。
そして、いよいよ白鯨との対決の時。
巨大な白鯨「モービィ・ディック」が、その姿を現すと・・・
すごい小説でした! カッコイイ小説でした!
しばらく、ほかの本が読めそうにもありません。
では、この小説で、一番カッコ良かったのは?
船長エイハブか? いや、ちがう。一等航海士スターバックか? いや、ちがう。
では、語り手のイシュメールか? まさか!
一番カッコ良かったのは、もちろん、モービィ・ディック。白鯨です。
特に、怒り狂った白鯨の迫力は、すさまじい。
その死闘の場面は、神々しいほどでした。
モービィ・ディックは、エイハブにとってはカタキであり、悪の象徴でした。
しかし、読めば読むほど、神が遣わした聖なる怪物だと思えてきます。
この怪物は、世界中を荒らし回る人類を滅ぼすために、神が遣わしたのではないか。
思い上がった人類を懲らしめるために、神が遣わしたのではないか。
メルヴィルは、時にくどいくらいに詳細に、鯨について講釈を垂れています。
しかしそれは、この聖なる怪物に対する、畏敬の念の表れなのかもしれません。
(読み飛ばすべきではなかったかも)
そう考えてみると、岩波文庫の表紙イラストは、本当にうまく描かれています。
モービィ・ディックの神々しさが、よく表現されています。この三冊は家宝級です。
余談です。スタバファンの間では有名な、コーヒー好きのスターバック。
しかし、彼がコーヒー好きであるという記述は、この小説のどこを探しても無いとか。
ただ、唯一、中巻のP368に、こんなことが書いてあります。
「いや、いや、ちがいますよ、スターバックさん、あれはコーヒー・ポットです。
われわれにコーヒーをいれてくれようっていうんですよ、あのドイツ人は。・・・」
これは、ドイツ捕鯨船と出会った時に、ある船員がスターバックに言った言葉です。
油差しを持つ相手の船長のしぐさを、コーヒーをいれるのだと解釈したジョークです。
この言葉から、スターバックがコーヒー好きだったと、推察することも可能です。
「スターバックのコーヒー」と思うと、ますますスタバが好きになってしまいます。
もうひとつ余談です。「エイハブは、おらんだ。」。オランダ?
「おらぶ」は「叫ぶ」という意味の古語です。この小説で頻出したので、覚えました。
さいごに。(役職を降りる)
本日4月1日から、7年間引き受けていた役職を降りて、気楽な身分になります。
今年は転勤するものとばかり思っていたため、すでに後任を頼んであったのです。