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白鯨2

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 「白鯨」2 メルヴィル作 八木敏雄訳 (岩波文庫)


 巨大な白鯨を追うエイハブ船長と、彼が指揮するピークオッド号の悲劇的な物語です。
 アメリカ文学の古典中の古典で、様々な解釈が可能な象徴的な小説です。

 オススメは岩波文庫。2004年の新訳です。3月に一度紹介しました。
 三分冊で、計1200ページ。このたび、ようやく読み終わりました。


白鯨 上 (岩波文庫)

白鯨 上 (岩波文庫)

  • 作者: ハーマン・メルヴィル
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2004/08/19
  • メディア: 文庫



白鯨 中 (岩波文庫)

白鯨 中 (岩波文庫)

  • 作者: ハーマン・メルヴィル
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2004/10/15
  • メディア: 文庫



白鯨 下 (岩波文庫 赤 308-3)

白鯨 下 (岩波文庫 赤 308-3)

  • 作者: ハーマン・メルヴィル
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2004/12/16
  • メディア: 文庫



 白鯨への復讐に執念を燃やす船長エイハブ。彼は、わが身の不死を半ば信じています。
 エイハブをいさめる一等航海士スターバック。彼は、わが身の破滅を予感しています。

 そして、いよいよ白鯨との対決の時。
 巨大な白鯨「モービィ・ディック」が、その姿を現すと・・・

 すごい小説でした! カッコイイ小説でした!
 しばらく、ほかの本が読めそうにもありません。

 では、この小説で、一番カッコ良かったのは?
 船長エイハブか? いや、ちがう。一等航海士スターバックか? いや、ちがう。

 では、語り手のイシュメールか? まさか!
 一番カッコ良かったのは、もちろん、モービィ・ディック。白鯨です。

 特に、怒り狂った白鯨の迫力は、すさまじい。
 その死闘の場面は、神々しいほどでした。

 モービィ・ディックは、エイハブにとってはカタキであり、悪の象徴でした。
 しかし、読めば読むほど、神が遣わした聖なる怪物だと思えてきます。

 この怪物は、世界中を荒らし回る人類を滅ぼすために、神が遣わしたのではないか。
 思い上がった人類を懲らしめるために、神が遣わしたのではないか。

 メルヴィルは、時にくどいくらいに詳細に、鯨について講釈を垂れています。
 しかしそれは、この聖なる怪物に対する、畏敬の念の表れなのかもしれません。
 (読み飛ばすべきではなかったかも)

 そう考えてみると、岩波文庫の表紙イラストは、本当にうまく描かれています。
 モービィ・ディックの神々しさが、よく表現されています。この三冊は家宝級です。

 余談です。スタバファンの間では有名な、コーヒー好きのスターバック。
 しかし、彼がコーヒー好きであるという記述は、この小説のどこを探しても無いとか。

 ただ、唯一、中巻のP368に、こんなことが書いてあります。
 「いや、いや、ちがいますよ、スターバックさん、あれはコーヒー・ポットです。
 われわれにコーヒーをいれてくれようっていうんですよ、あのドイツ人は。・・・」

 これは、ドイツ捕鯨船と出会った時に、ある船員がスターバックに言った言葉です。
 油差しを持つ相手の船長のしぐさを、コーヒーをいれるのだと解釈したジョークです。

 この言葉から、スターバックがコーヒー好きだったと、推察することも可能です。
 「スターバックのコーヒー」と思うと、ますますスタバが好きになってしまいます。

 もうひとつ余談です。「エイハブは、おらんだ。」。オランダ?
「おらぶ」は「叫ぶ」という意味の古語です。この小説で頻出したので、覚えました。

 さいごに。(役職を降りる)

 本日4月1日から、7年間引き受けていた役職を降りて、気楽な身分になります。
 今年は転勤するものとばかり思っていたため、すでに後任を頼んであったのです。

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