「われらの時代・男だけの世界」 ヘミングウェイ作 高見浩訳 (新潮文庫)
パリで文学修業をしていた時期の、総決算とも言われる短編集です。
初期の作品集ですが、すでに作者特有の文体が完成されています。
新潮文庫の「ヘミングウェイ全短編1」に収められています。
訳は1995年当時の新訳。原作のリズムを生かした素晴らしい訳です。

われらの時代・男だけの世界 (新潮文庫―ヘミングウェイ全短編)
- 作者: アーネスト ヘミングウェイ
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1995/10/01
- メディア: 文庫
「われらの時代」は、「グレート・ギャツビー」と同じ1925年に出ました。
のちに「非情な文体」といわれる、簡潔で緊張感のある文体で書かれました。
この作品のうちの半数は、作者の分身を主人公にした「ニック・アダムズ物語」。
ヘミングウェイ流の「少年時代」的な自伝小説で、これがとても素晴らしい。
「インディアンの村」は、父とインディアンの村に行ったときの話です。
わずか8ページですが、鮮烈な印象を残します。胸にじーんときます。
ほかに、「医師とその妻」「ある決別」などがオススメです。
スケッチ風の短い作品ですが、ヘミングウェイらしい味わいが出ています。
「われらの時代」の2年後に出た短編集が、「男だけの世界」です。
タイトル通り、男の世界を描いた作品が多いです。
例えば、闘牛の世界から離れられない闘牛士を描いた「敗れざる者」。
自分の負けに大金を賭けるボクサーを描いた「五万ドル」。
この2つは、とても印象的な作品です。
「異国にて」や「白い象のような山並み」は10ページほどですが、オススメです。
ヘミングウェイの作品は、どれもカッコ良くて、どこか哀切な感じです。
読み始めるとクセになります。私は高見訳が出た当時、思いっきりハマりました。
さいごに。(「しずくちゃん」)
娘がハマっているのが、この本です。「しずくちゃん」シリーズ。
ひとりで勝手に読んでくれるので(親に読んでくれと言わないので)、助かります。