「幽霊船 他一篇」 メルヴィル作 坂下昇訳 (岩波文庫)
「幽霊船」と「バートルビー」の傑作中編二篇を収録した作品集です。
「幽霊船」は、難破して漂流するスペイン船にまつわる物語です。
岩波文庫から出ていましたが品切れ。楽天オークションで手に入れました。
初版は1979年。訳は古いため、少し 読みにくかったです。
1799年のこと。アメリカの商船のデラーノ船長は、ある難破船に遭遇しました。
それはスペインの奴隷船で、船長のドン・ペニートは、ひどく陰鬱な男でした。
スペイン船の中は、異様な雰囲気に包まれていました。
デラーノは、スペイン人船長から、漂流のいきさつを聴きますが・・・
どうしてこれだけ長い間、漂流していたのか?
どうして壊血病や熱病で、黒人らはそれほど死ななかったのか?
刃物を研ぐようなあの音は何か? この異様な雰囲気は何か?
スペイン人船長に始終付き添っている、バボーなる黒人はいったい何者か?
スペイン人船長のとった衝動的な行動。黒人たちによる意外な行動・・・
最後まで、予想外の展開が続きます。
私はこの作品を、タイトルに惑わされて、ホラー小説として読んでいました。
だから、いつ幽霊が出現するのかと、そればかりに気を取られていました。
しかし、それは間違っていました。ホラー小説よりも、推理小説に近いです。
解説には、「メルヴィルが書いた唯一の推理小説だと評していい」とあります。
そう思って読み返してみると、なかなか良くできた推理小説です。
ただし、訳のせいなのか、とても読みにくい。新訳化を強く望みます。
ところで、この本には「バートルビー」という作品も収録されています。
これがまた、実に興味深いのです。「バートルビー」については次回に。
さいごに。(ラムネ)
町内の夏祭りで、娘は初めてラムネを飲んで、とても気に入ったみたいです。
サンタクロースには、ラムネ10本をお願いする、と今から言っています。