「セールスマンの死」 アーサー・ミラー作 倉橋健訳 (ハヤカワ演劇文庫)
夢破れ人生に疲れたセールスマンが、自滅していく姿を描いた戯曲です。
作者アーサー・ミラーの地位を、不動にした名作です。
2006年に刊行が開始されたハヤカワ演劇文庫の、最初に出た作品です。
訳は分かりやすくて、活字は読みやすいです。

アーサー・ミラー〈1〉セールスマンの死 (ハヤカワ演劇文庫)
- 作者: アーサー・ミラー
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2006/09/20
- メディア: 文庫
かつては敏腕セールスマンで、あちこちに商品を売りまくっていた父のウィリー。
しかし63歳になる今は、過去の栄光にすがって生きる、落ちぶれた年寄りです。
かつてはフットボールの花形選手で、自信にあふれ前途洋々だった息子のビフ。
しかし34歳になる今は、職もなく自分の将来が全く見いだせない男です。
かつて景気の良かったローマン家は、今は暮らしていくのがやっと。
かつて和気あいあいとしていた家族は、今はケンカばかり。
あのころの栄光はどこへ行ってしまったのか。どこで道を間違えたのか。
あのころの幸せを、取り戻すことはできないのか。
しだいに分かってくる意外な事実・・・
そして、すべてを取り戻すために、ウィリーのとった驚くべき行動・・・
実にせつないです。泣けます。涙無しには読めませんし、見られません。
試演では、幕が下りても拍手は起こらず、観客はただ泣いていたといいます。
特に、幻影に向かって話し始めるウィリーは、あまりにも痛々しい。
こういう傑作を、文庫本で提供してくれたハヤカワ演劇文庫さんに感謝です。
「考えてみるとだね、一生働きつづけてこの家の支払いをすませ、
やっと自分のものになると、誰も住む者はいないんだな。」(P16)
ウィリーのこのセリフに、私はドキリとしてしまいました。
というのも、うちの住宅も、ウィリーと同じく25年ローンなので。
さいごに。(娘が8歳に)
先日娘が8歳になりました。バースデイケーキを自宅で作りました。
このブログを始めたとき、娘はまだ3歳でした。月日が過ぎるのは速いです。