「ギリシア悲劇Ⅲ エウリピデス上」(ちくま文庫)
「トロイアの女」は、トロイア陥落後に残されたトロイアの女たちの悲劇です。
ギリシアに対する批判的な言辞が見られるところが特徴です。
ちくま文庫「ギリシア悲劇Ⅲ エウリピデス上」に収録されています。
訳は、1965年刊行の「世界古典文学全集9」のものです。
十年もの長きにわたったトロイア戦争は、トロイア城陥落によって終結しました。
トロイアに残された女たちは、勝利したギリシア軍によって捕らえられました。
トロイアの女王ヘカベが目にしたのは・・・娘カッサンドラは連れ去られ、
ヘクトルの妻アンドロマケも連れ去られ、生き残った幼い王子は殺され・・・
「ああギリシア人らよ、そなたらの槍の誉れは高くとも、心ばえはとてもそれには
及ばぬと見える」(P696)
敵国トロイア側から、ギリシアの残虐な行為を描いている所に特徴があります。
特に王女ヘカベは、終始舞台で王家の悲惨な末路を見て、ギリシアを批判します。
多くのアテナイ人の観客を前にして、「ああギリシア人らよ」と嘆くヘカベ。
このような批判の背景には、メロス島の虐殺という歴史的事件があったという。
ペロポネソス戦争時、中立を保とうとするメロス島に、アテナイ軍が侵攻しました。
心ある市民によるアテナイへの批判が、へカベの言葉で代弁されているようです。
一方、「イオン」はロマン劇に分類され、この本の中では異彩を放つ作品でした。
ギリシア悲劇というよりは、シェークスピア劇のような印象でした。
イオンは、アポロン神が、アテナイの王女クレウサに産ませた子供です。
彼は両親を知らず、神殿で養われて、今は一青年として神に仕えています。
クレウサの夫が、神託によってイオンをわが子と認め、連れ帰りました。
クレウサは、それを夫の隠し子だと考え、イオンを殺そうとして・・・
いったい、この後の展開はどうなるのかと、ハラハラドキドキします。
他の作品のような深刻さは無くて、とても楽しめる作品でした。
さて、ちくま文庫「ギリシア悲劇Ⅲ エウリピデス上」は、税込み1620円です。
それでも、私は安いと思います。というのも、全10作収録されているからです。
もし、バラで復刊されたらどうか。岩波文庫「ヒッポリュトス」は454円です。
単純に10をかけると4540円。そう考えると絶対お得。オススメです。
さいごに。(発熱)
一昨日娘は38度の熱を出して、学校を休みました。医者の診断は、ただの風邪。
昨日は元気に登校できて、ほっとしました。今日が、小学校の運動会なので。