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一瞬の風になれ

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 「一瞬の風になれ」 佐藤多佳子 (講談社文庫)


 4継リレーに青春をかけた春高陸上部を、新二と連の二人を中心に描いた物語です。
 2007年の本屋大賞と吉川栄治文学新人賞に輝き、ドラマ化もされた大話題作です。

 2007年に出た時私は図書館で借りました。文庫は2009年に講談社から出ました。
 また2008年から、原作に忠実なコミックも出ています。


一瞬の風になれ 一~三部 全3巻セット (講談社文庫)

一瞬の風になれ 一~三部 全3巻セット (講談社文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2009
  • メディア: 文庫



一瞬の風になれ コミック 全6巻完結セット (少年マガジンコミックス)

一瞬の風になれ コミック 全6巻完結セット (少年マガジンコミックス)

  • 作者: 安田 剛士
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2010/05/17
  • メディア: コミック



 新二は、中学校まで兄をひたすら追いかけて、サッカーをやってきました。
 しかし、スター選手である兄との差が大きくて、自分の進む道に迷っていました。

 新二は入学した春野台高校で、幼なじみの連と再会しました。
 連は中2のとき100mで全国2位になった逸材ですが、陸上から離れていました。

 体育の授業で50m走の計測をしたとき、新二と連はたまたま一緒に走り・・・
 この勝負がきっかけとなり、2人は高校3年間を陸上にかけることになって・・・

 陸上小説の最高峰です。これを超える陸上小説は、なかなか現れないでしょう。
 この小説が出た時、いてもたってもいられなくて、図書館で借りてしまいました。

 そして、数日間どっぷりと、春高陸上部の世界につかりました。
 私も高校時代に返って、メンバーと同じような熱い気持ちを味わいました。

 リレメン特有の連帯感、スタート直前の緊張感、疾走中の言葉に表せない感覚・・・
 仲間たちの引退レース、3年の県大会のマイル、そして南関東大会での4継・・・

 作者佐藤多佳子は、この本を書くために、某高校陸上部を3年間取材したそうです。
 さすがです。陸上のことがよく分かっていないと、なかなかここまでは書けません。

 「陸上はね、距離、時間、高さ、その見えない強さを数字にするスポーツなんだよ」
 「この地球様に力をもらう! 重力を利用して最大限の力で前に進む!」

 「走ることが等しく尊い、短距離でも長距離でも、タイムにも順位にもかかわらず、
 限界にチャレンジして走ることが単純に尊い、その苦しさと喜びを共有できる」

 「人生は、世界は、リレーそのものだと思う。
 バトンを渡して人とつながっていける、一人だけではできない」

 ところで私はこの作品で、「文庫化したら買って読む」というルールを破りました。
 その後しばらくして、文庫全3巻を買いましたが、まだ読んでいません。

 いつもなら、文庫本に引いた傍線部をたどることで、内容を思い出します。
 しかし今回はそれができません。3冊の文庫は新品のまま書棚に並んでいるので。

 そこで、コミック版「一瞬の風になれ」全6巻を、アマゾンで買って読みました。
 このコミックは、忠実に小説の世界を描いていて、とても好感が持てました。

 小説も、コミックも、とてもうまく陸上競技の魅力を伝えてくれています。
 新二を素人という設定にしているため、初心者にも分かりやすく書かれています。

 さて、「一瞬の風になれ」は、短距離を志す人にとっての必読書となりました。
 そして、長距離を志す人にとっての必読書が、「風が強く吹いている」です。

 たまたまこの2冊の「陸上&風コンビ」は、同じ2007年に話題となりました。
 2007年の本屋大賞の1位が「一瞬の風」で、3位が「風が強く」でした。


風が強く吹いている (新潮文庫)

風が強く吹いている (新潮文庫)

  • 作者: 三浦 しをん
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2009/06/27
  • メディア: 文庫



 三浦しをんの「風が強く吹いている」は、すでに購入して書棚にあります。
 次のお正月休みの箱根駅伝前に、じっくりと読むつもりです。

 さいごに。(4継銀メダルの私的な影響)

 また見てしまった、オリンピックの4継決勝の録画を。
 アメリカを抑えて2位でゴールした瞬間は、何度見てもいい!

 私は急遽、10月の下旬に開催される県マスターズ大会にエントリーしました。
 あのレースを見て走りたくなった人は、多いのではないでしょうか。

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