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海辺の悲劇

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 「海辺の悲劇」 バルザック作 水野亮訳 (岩波文庫)


 「海辺の悲劇」は、一家にとって不名誉な息子を殺す父親を描いた短篇です。
 ほか「グランド・ブルテーシュ綺譚」などを含む短編集です。

 岩波文庫から、今年2013年2月に、復刊されたばかりです。
 初版は1934年! しかし、さすがバルザック、すでに28刷です。

 でも、それなら改版を出してほしい。いや、どうせなら新訳を出してくれ!
 相変わらず、このカバーの復刊本は、旧字体で読みにくいです。


海邊の悲劇―他三篇 (岩波文庫 赤 530-7)

海邊の悲劇―他三篇 (岩波文庫 赤 530-7)

  • 作者: バルザック
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1934/05/25
  • メディア: 文庫



 「グランド・ブルテーシュ綺譚」については、古典新訳文庫から出ていました。
 「海辺の悲劇」は収録されていません。


グランド・ブルテーシュ奇譚 (光文社古典新訳文庫)

グランド・ブルテーシュ奇譚 (光文社古典新訳文庫)

  • 作者: オノレ・ド バルザック
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2009/09/08
  • メディア: 文庫



 表題作の「海辺の悲劇」は、ある異常な事件を扱った作品です。
 わずか40ページ足らずですが、強烈な印象を残す傑作です。

 海から突き出た花崗岩に、ひとりの男が座っていました。
 村の人々はその男を避けています。ある漁師が、その理由を語りました。

 その男はカンブルメルという名で、かつては溺愛している子供がいました。
 しかし、その子が成長し、一家の面汚しとなると、ある決断をしました。

 「お前のあの世の命にかけて、ちゃんと誓へるか?」
 「ああ、誓ふ。」息子のこの言葉が、息子自身の命取りとなって…

 解説にも書いてあるように、メリメの「マテオ・ファルコネ」に似ています。
 メリメ →http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2010-01-27
 それにしても、重たい物語です。

 この作品が巻末にある理由が分かります。
 もう、ほかに何も読む気になれません。

 巻頭の「グランド・ブルテーシュ綺譚」も、間違いなく傑作です。
 エドガー・ポーの「黒猫」を思わせるような作品です。
 ポー「黒猫」 →http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2010-04-08

 ある夜遅く、メレ氏が妻の寝室に入る瞬間、押入れの扉が閉まる音がしました。
 「誰かこの押入に入つてるね!」 「いいえ。」

 メレ氏は妻の嘘を確信しながらも、十字架の前で、妻にその言葉を誓わせました。
 これが、残酷な復讐の始まりです。

 たまたま天井を塗り替えたばかりだったので、家には漆喰が余っていました。
 そこで、メレ氏はある計画を思いつき、左官屋を呼んで…

 すごい展開です。淡々と語られていますが、かえってゾクゾクしてきます。
 「あなたは誓つたはずだ。」最後の何でもない言葉が、実に重くて恐ろしいです。

 ところで、バルザックと言えば、この2月に「艶笑滑稽譚」全三巻が完結しました。
 ぜひ読みたい。


艶笑滑稽譚 第一輯――贖い能う罪 他 (岩波文庫 第1回)

艶笑滑稽譚 第一輯――贖い能う罪 他 (岩波文庫 第1回)

  • 作者: バルザック
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2012/11/17
  • メディア: 文庫



 さいごに。(小学校まで歩いてみました)

 家族3人で、4月から娘が通う小学校まで、歩いてみました。
 ちょうど桜が咲き始めていて、桃の花も見頃で、気持ち良く歩けました。

 のんびり歩いて35分。思ったより、時間がかからなかったです。
 ランドセルを背負って、友達としゃべりながら歩くと、小一時間かかるのだそうです。

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