「海辺の悲劇」 バルザック作 水野亮訳 (岩波文庫)
「海辺の悲劇」は、一家にとって不名誉な息子を殺す父親を描いた短篇です。
ほか「グランド・ブルテーシュ綺譚」などを含む短編集です。
岩波文庫から、今年2013年2月に、復刊されたばかりです。
初版は1934年! しかし、さすがバルザック、すでに28刷です。
でも、それなら改版を出してほしい。いや、どうせなら新訳を出してくれ!
相変わらず、このカバーの復刊本は、旧字体で読みにくいです。
「グランド・ブルテーシュ綺譚」については、古典新訳文庫から出ていました。
「海辺の悲劇」は収録されていません。
表題作の「海辺の悲劇」は、ある異常な事件を扱った作品です。
わずか40ページ足らずですが、強烈な印象を残す傑作です。
海から突き出た花崗岩に、ひとりの男が座っていました。
村の人々はその男を避けています。ある漁師が、その理由を語りました。
その男はカンブルメルという名で、かつては溺愛している子供がいました。
しかし、その子が成長し、一家の面汚しとなると、ある決断をしました。
「お前のあの世の命にかけて、ちゃんと誓へるか?」
「ああ、誓ふ。」息子のこの言葉が、息子自身の命取りとなって…
解説にも書いてあるように、メリメの「マテオ・ファルコネ」に似ています。
メリメ →http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2010-01-27
それにしても、重たい物語です。
この作品が巻末にある理由が分かります。
もう、ほかに何も読む気になれません。
巻頭の「グランド・ブルテーシュ綺譚」も、間違いなく傑作です。
エドガー・ポーの「黒猫」を思わせるような作品です。
ポー「黒猫」 →http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2010-04-08
ある夜遅く、メレ氏が妻の寝室に入る瞬間、押入れの扉が閉まる音がしました。
「誰かこの押入に入つてるね!」 「いいえ。」
メレ氏は妻の嘘を確信しながらも、十字架の前で、妻にその言葉を誓わせました。
これが、残酷な復讐の始まりです。
たまたま天井を塗り替えたばかりだったので、家には漆喰が余っていました。
そこで、メレ氏はある計画を思いつき、左官屋を呼んで…
すごい展開です。淡々と語られていますが、かえってゾクゾクしてきます。
「あなたは誓つたはずだ。」最後の何でもない言葉が、実に重くて恐ろしいです。
ところで、バルザックと言えば、この2月に「艶笑滑稽譚」全三巻が完結しました。
ぜひ読みたい。
さいごに。(小学校まで歩いてみました)
家族3人で、4月から娘が通う小学校まで、歩いてみました。
ちょうど桜が咲き始めていて、桃の花も見頃で、気持ち良く歩けました。
のんびり歩いて35分。思ったより、時間がかからなかったです。
ランドセルを背負って、友達としゃべりながら歩くと、小一時間かかるのだそうです。