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ジヴェルニーの食卓

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 「ジヴェルニーの食卓」 原田マハ (集英社文庫)


 マティス、ドガ、セザンヌ、モネ等が、身近に感じられる短編小説集です。
 本屋大賞3位の「楽園のカンヴァス」と、同時期に書かれた美術小説です。
 「楽園のカンヴァス」→ http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2016-1-14


ジヴェルニーの食卓 (集英社文庫)

ジヴェルニーの食卓 (集英社文庫)

  • 作者: 原田 マハ
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2015/06/25
  • メディア: 文庫



 この本に収録されている4編は全て秀逸です。駄作が一つもありません。
 印象派ファンにはたまらない内容です。収録順に紹介していきましょう。

 冒頭の「うつくしい墓」は、元家政婦の老婦人が語る思い出です。
 ある日マダムに頼まれて出向いた先は、画家マティスの住む部屋で・・・

 特にマティスのもとを、ピカソが最後に訪問したときの場面は良いです。
 この二人の巨匠の会話が、本当に聞こえてくるような気がしました。

 「アンリ・マティスが、私の人生をのちのちまでやわらかく包み込む陽光
 だったとすれば、パブロ・ピカソは、ほんの一瞬閃いた稲妻でした。」(P 44)

 二つ目の「エトワール」は、老いた女流画家メアリーが語る思い出です。
 メアリーが、伝説の画商デュランに相談されたことは・・・

 ドガが制作した唯一の彫刻「十四歳の小さな踊り子」を巡る物語です。
 ドガが、彼女と自分は同じだ(P123)と言う場面が印象に残りました。

 もの悲しいのに、心が温まります。ドガという画家に興味が湧きました。
 「エトワール」は、4編の収録作中のマイベストです。

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 三つ目の「タンギー爺さん」は、タンギー爺さんの娘が書いた手紙です。
 彼女は、断続的にセザンヌに手紙を書き、様々な思いを伝えていました。

 画商タンギー、セザンヌ、小説家のゾラ、ゴッホ、ゴーギャン・・・
 タンギー一家から見た、印象派 の巨匠たちの素顔!

 最後の「ジヴェルニーの食卓」は、モネの義娘ブランシュを中心とした話です。
 睡蓮の絵を国に寄贈する契約を締結してから、モネの気力はいっきに衰え・・・

 晩年のモネは睡蓮の絵を、いかにして完成させていったのか?
 やはり表題作のこの作品が、最も完成度が高いように思いました。

 全体を通してすばらしい本です。登場する画家の作品を鑑賞したくなります。
 欲を言えば、アンリ・ルソーの物語を、もう一度描いてほしかったのですが。

 さいごに。(鷹の爪)

 最近うちの娘がはまっているのは、「秘密結社 鷹の爪」です。
 ツタヤでDVDをレンタルしてきて、片っ端から見ています。

 1話が短いので、私も時々一緒に見ますが、内容は実にくだらない。
 しかし、娘が言うには、NHKでもやっていたらしい。(ほんと?)



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