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春の道標

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 「春の道標」 黒井千次 (新潮文庫)


 高校2年の明史と中学3年の棗の甘く切ない恋愛を、瑞々しく描いた青春小説です。
 1981年に刊行されて、読書感想文の課題図書となり、特に若者に読まれた作品です。


春の道標 (新潮文庫)

春の道標 (新潮文庫)

  • 作者: 黒井 千次
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1984/06
  • メディア: 文庫



 高校2年の明史(あけし)には、慶子(けいこ)という一つ年上の恋人がいました。
 しかし、慶子のペースに戸惑い、「親友でいたい」と訴えて、関係は途絶えました。

 ちょうどその頃、明史の心は、毎朝顔を合わせる少女の方に、動かされていました。
 少女は棗(なつめ)という名前で、まだ中学3年生でした。

 明史が棗に声を掛けてから、2人は急接近していきます。
 一緒に登校し、学校祭に招待し、丘に登って散策し 、同じ高校への入学を勧め・・・

 ところが、棗には小堀という大学院生の家庭教師がいて、家族同然の間柄でした。
 そして、明史と棗はお互いに惹かれながらも・・・

 この小説を知ったのは、私が高校3年生の頃でした。
 学校の授業で、共通一次試験の過去問題を解いていたときのことです。

 そう、この小説は1980年代に、共通一次(現センター)試験で出題されたのです。
 明史と棗のことが気になって、本屋で購入して、受験勉強そっちのけで読みました。

 岩波文庫の白帯を持っていた棗。「生きているのって、哀しいな」とつぶやく棗。
 齧り跡のついたリンゴに口を重ねる棗。丘の上で二人きりになったときの棗。

 その頃、棗は、本読み仲間のヒロインでした。だから、あの結末は許せなかった!
 「大事なお友達に、なれると思う・・・」「地獄だよ、そんなの。」

 あれから30年以上たって、久しぶりに読み返し、当時と同じ感動を味わいました。
 ところが、以前とは違った部分も、また見えてきて面白かったです。

 あの頃は一方的に「棗が悪い」と思っていたけど、明史にも問題ありですね。
 結局、明史は自分が慶子にした同じことを、棗にされたわけです。

 また当時は、明史の背伸びしたところや、甘えたところに、腹が立ちましたが、
 今回は、そういう所がかわいく思えて好感が持てました。年のせいでしょうか。

 さいごに。(紅葉)

 先日、家から2時間ほどの場所へ、家族で紅葉を見に行きました。
 とてもきれいでした。紅葉は、仕事で疲れた心を癒してくれます。

紅葉ツアー.jpg

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