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中国文学入門

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 「中国文学入門」 吉川幸次郎 (講談社学術文庫)


 表題作は、世界文学史の視点から、中国文学を平易に解説した入門書です。
 1951年(昭和26年)に出て、現在まで読まれ続けている名著です。


中国文学入門 (講談社学術文庫)

中国文学入門 (講談社学術文庫)

  • 作者: 吉川 幸次郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1976/06/07
  • メディア: 文庫



 西洋において発展した叙事詩は、中国においてはあまり発展しませんでした。
 叙事詩に代わって、叙情詩が重視されたことが、中国文学の大きな特徴です。

 紀元前5世紀に、孔子が中国最古の詩編「詩経」を教科書として使いました。
 その後、詩に親しむのは紳士のたしなみと、考えられるようになりました。

 隋の時代に始まった科挙では、詩賦が試験科目に入るようにさえなりました。
 唐の時代に、国力が最盛期に入ると同時に、唐詩も最盛期を迎えました・・・

 というように、中国文学の歴史を、ざっくりと分かりやすく解説しています。
 また、世界文学との比較から、中国文学の特徴を浮き彫りにしています。

 「西洋の考えかたは、その源となりますヘブライズムにしましても、ギリシャに
 しましても、それぞれ人間に対立する世界として、神の世界なりイデアの世界と
 いうふうなものを設定して、そこに人間の理想を求める。」

 「しかし、中国人の考え方はそうではありません。少なくともその最も有力な思想
 は、無神論の立場にあります。(中略)人間そのものの中に、人間の道理はある。」

 なるほど。とても刺激的な指摘が、随所に散らばっています。
 このような指摘ができるのは、よほど多くの著作を読んだからでしょう。

 この本には表題作「中国文学入門」のほか、6本の短い論文が収録されています。
 中でも「一つの中国文学史」と「中国文学の四時期」は、表題作を補っています。

 ただし、大きな流れをとらえていますが、個々の作品に対する言及は少ないです。
 それを補ってくれるのが、岩波新書「中国文学講話」です。


中国文学講話 (岩波新書)

中国文学講話 (岩波新書)

  • 作者: 倉石武四郎
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2013/06/01
  • メディア: 新書



 この本も古く、初版が1968年に出ましたが、現在も読まれ続けています。
 講話の形式なので、著者が語りかけてくるようで、親しみやすい本です。

 9章「奇をつたえる」では、「柳毅伝」や「鶯鶯伝」などマイナーな作品の
 内容が、とても詳細に語られています。こういう部分は貴重だと思います。

 できれば、「中国文学史概説」みたいな本が、文庫本で出るといいのだけど。
 今年は中国と日本の古典を読み進めていく予定なので。

 さいごに。(斎場御嶽)

 沖縄最大のパワースポットが、斎場御嶽(せーふぁうたき)です。
 このような霊場が、いたるところにあって、興味深かったです。

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