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ダントンの死

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 「ダントンの死」 ビューヒナー作 岩淵達治訳 (岩波文庫)


 フランス革命で活躍したダントンが、断頭台の露と消える場面を描いた戯曲です。
 23歳で早逝したビューヒナーの、迫力に満ちた傑作です。

 2006年に岩波文庫から出されました。
 「ヴォイツェク」「レンツ」などの傑作も収録しています。


ヴォイツェク ダントンの死 レンツ (岩波文庫)

ヴォイツェク ダントンの死 レンツ (岩波文庫)

  • 作者: ビューヒナー
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2006/10/17
  • メディア: 文庫



 ロベスピエールとともに、フランス革命の立役者であるダントン。
 しかしダントンは、自分がおこなった革命に、その人殺しに、うんざりしています。

 一方、「共和国の武器は恐怖だ」と、恐怖政治を断行しようとするロベスピエール。
 そしてロベスピエールは、意見の合わないダントンの逮捕を決意しました。

 ダントンは、仲間から命の危険を警告されます。
 しかし、ダントンは逃げません。また、何の対策も立てません。

 時代の流れは止められない、運命を受け入れるしかない、そう考えているようです。
 そしてダントンは、死というものに、絶望ではなく、救いを見ているようです。

 こうしてダントンは、自分自身が作った革命裁判所によって裁かれるわけですが、
 彼を死に追いやったロベスピエールも、その数ヵ月後に断頭台に登る運命でした。

 一説に、ギロチンに引かれていくダントンが、ロベスピエールの家の前を通った時、
 「次はきさまの番だぞ!」と叫んだといいます。ダントンらしいエピソードです。

 この戯曲には、当時の時代の狂気が、よく表れています。
 この本に収録されたほか2編も、狂気を感じさせる作品です。

 「レンツ」は、ドイツ作家レンツが、狂気に陥っていく様子を描いた短編小説です。
 死んだ子を生き返らせようとして祈り、「起きて歩け!」と叫ぶ場面は笑えます。

 「ヴォイツェク」は、ある下級軍人が、情婦を刺殺するまでを描いた戯曲です。
 主人公の軍人ヴォイツェクがまた、狂気に陥っています。作品は未完。

 ビューヒナーの傑作三作を収録している点で、この本はお得です。
 ただし、訳注と解説等が約100ページ。読まないって!

 その分をカットして、700円ぐらいに抑えてくれたらいいのに。
 今後も絶版にならないよう、多くの人に買ってもらいたいから。

 ところで「ダントンの死」を読んで、革命関係の二作を思い出しました。
 ミシュレの「フランス革命史」と、A・フランスの「神々は渇く」です。
 どちらも未読のまま、私の本棚で仲良く眠っています。


フランス革命史〈上〉 (中公文庫)

フランス革命史〈上〉 (中公文庫)

  • 作者: ジュール ミシュレ
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2006/12
  • メディア: 文庫




神々は渇く (岩波文庫 赤 543-3)

神々は渇く (岩波文庫 赤 543-3)

  • 作者: アナトール・フランス
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1977/05/16
  • メディア: 文庫



 さいごに。(大きなかぶ)

 娘が小学校の宿題で、「大きなかぶ」を暗記させられました。
 すらすら暗記できていました。

 懐かしいです。40年前の我々の時代と、変わっていません。
 犬や猫やねずみが、一緒になって引っ張るところが楽しいです。

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