「ダントンの死」 ビューヒナー作 岩淵達治訳 (岩波文庫)
フランス革命で活躍したダントンが、断頭台の露と消える場面を描いた戯曲です。
23歳で早逝したビューヒナーの、迫力に満ちた傑作です。
2006年に岩波文庫から出されました。
「ヴォイツェク」「レンツ」などの傑作も収録しています。
ロベスピエールとともに、フランス革命の立役者であるダントン。
しかしダントンは、自分がおこなった革命に、その人殺しに、うんざりしています。
一方、「共和国の武器は恐怖だ」と、恐怖政治を断行しようとするロベスピエール。
そしてロベスピエールは、意見の合わないダントンの逮捕を決意しました。
ダントンは、仲間から命の危険を警告されます。
しかし、ダントンは逃げません。また、何の対策も立てません。
時代の流れは止められない、運命を受け入れるしかない、そう考えているようです。
そしてダントンは、死というものに、絶望ではなく、救いを見ているようです。
こうしてダントンは、自分自身が作った革命裁判所によって裁かれるわけですが、
彼を死に追いやったロベスピエールも、その数ヵ月後に断頭台に登る運命でした。
一説に、ギロチンに引かれていくダントンが、ロベスピエールの家の前を通った時、
「次はきさまの番だぞ!」と叫んだといいます。ダントンらしいエピソードです。
この戯曲には、当時の時代の狂気が、よく表れています。
この本に収録されたほか2編も、狂気を感じさせる作品です。
「レンツ」は、ドイツ作家レンツが、狂気に陥っていく様子を描いた短編小説です。
死んだ子を生き返らせようとして祈り、「起きて歩け!」と叫ぶ場面は笑えます。
「ヴォイツェク」は、ある下級軍人が、情婦を刺殺するまでを描いた戯曲です。
主人公の軍人ヴォイツェクがまた、狂気に陥っています。作品は未完。
ビューヒナーの傑作三作を収録している点で、この本はお得です。
ただし、訳注と解説等が約100ページ。読まないって!
その分をカットして、700円ぐらいに抑えてくれたらいいのに。
今後も絶版にならないよう、多くの人に買ってもらいたいから。
ところで「ダントンの死」を読んで、革命関係の二作を思い出しました。
ミシュレの「フランス革命史」と、A・フランスの「神々は渇く」です。
どちらも未読のまま、私の本棚で仲良く眠っています。
さいごに。(大きなかぶ)
娘が小学校の宿題で、「大きなかぶ」を暗記させられました。
すらすら暗記できていました。
懐かしいです。40年前の我々の時代と、変わっていません。
犬や猫やねずみが、一緒になって引っ張るところが楽しいです。