「文学のレッスン」 丸谷才一・湯川豊 (新潮文庫)
気の置けない相手と、文学の8つのジャンルについて語った対談集です。
2012年に他界した氏の、晩年の記録です。
今年の10月に文庫化されて、新潮文庫から出たばかりです。
語りかけるように書かれているので、分かりやすくて読みやすいです。
ジャンルは、短編、長編、伝記・自伝、歴史、批評、エッセイ、戯曲、詩。
対談は、2007年1月から2009年の8月まで、8回行われました。
対談なので、時々話が飛びます。
しかし、飛んでいながらも、話はちゃんとつながっています。
ざっくばらんに対談しているようでいて、構成はとても計算されています。
あとがきによると、事前の打ち合わせを、とても綿密に行っていたらしい。
私にとって参考になったのは、文学史をざっくり鷲づかみにした部分です。
たとえば、次のような言葉は、目からウロコでした。(要約しました)
十八世紀のイギリスの長編小説が世に広まって、フランスに渡って啓蒙思想と
結びついて発展して、辺境のロシアにまで達したとき、ロシアの大小説という
大騒ぎになり、そこから全世界に広がり、小説が文学の支配的な形式となった。
こういう大きな捕らえ方を示す一方で、細かな薀蓄がさりげなく披露されます。
たとえば・・・
短編は形式美が大事だからフランスで発展した。イギリス人は形式美が苦手とか。
短編はかつてスケッチと呼ばれた。これが日本に入り、写生文となったとか。
こういった含蓄に富む言葉が、惜しげもなく、次から次に現れます。
ところで、戯曲を扱った章で、マキャヴェリの「マンドラゴーラ」が登場。
とても楽しそうな喜劇です。読みたいです。新訳で文庫化してほしい。
この本を読むと、丸谷の「日本文学史早わかり」も読みたくなります。
ただし、講談社文芸文庫です。 (ああ、どうして?)
同じく湯川を聞き手にした、「思考のレッスン」という対談集もあります。
表紙イラストが、「文学のレッスン」と同じ和田誠。姉妹編っぽくて良いです。
この中で面白かったのは、「レッスン4 本を読むコツ」。
本は各自が読みやすいように読むべきなので、ページをばらばらにしてもいい、
というような、少しばかり乱暴なことも言っています。
さいごに。(サザエさん)
サザエさんの始まりの歌の背景が、最近、我々の地元の名所になっています。
うちの近くの動物園が出てくるので、近所ではちょっと話題になっています。
ロッシーという、地元で人気の白熊が出てくるので。
ちなみに、ロシアから来たので、ロッシーと言います。