「真空地帯」 野間宏 (岩波文庫)
刑務所から部隊に戻った木谷一等兵の立場から、軍国主義を批判した作品です。
野間宏の代表作で、映画化や舞台化もされました。
かつて、岩波文庫や新潮文庫から出ていましたが、現在は絶版。
私は、岩波文庫の2005年第30刷で読みました。初版は1956年。
字が小さくて、古い活字が使われているため、とても読みにくかったです。
しかも、会話が関西弁のため、関東文化圏の人間には、実に分かりにくい。
それにもかかわらず、ぐいぐい引き込んでいく力のある作品です。
軍隊には、人間的な空気がありません。そこは、「真空地帯」です。
この真空地帯の壁を破ろうとしたのが、主人公の木谷です。
木谷一等兵が、二年の刑を終わって部隊に帰った所から、物語は始まります。
服役の理由は、部隊内での窃盗。しかし、それにしては刑が重すぎます。
木谷の事件には、何かありそうなのです。
物語が進むに従って、少しずつ様々な謎が、ほどかれていきます。
次々に暴かれる軍部の腐敗。
そして、どろどろした権力闘争。
なぜ、木谷の罪がこれほど重くなったのか。
誰が、木谷を陥れたのか。
そして、事件の真相は?
敵であった中尉が、最後に話してきかせた衝撃の真実!
活字が小さくて読みにくいのに、どんどん読めてしまいます。
内容は暗い話で気が滅入るのに、どんどん読めてしまいます。
上巻を読み終わった時、手元に下巻が無くて慌てました。
ぜひ、上下巻合わせて、改版を出してほしい。
そして、少しは注釈もほしいです。
頻出する「おすけ」の意味が分からなくて、もどかしい思いをしました。
調べても分かりません。「役立たず」とか「ダメ男」とかの意味でしょうか。
野間宏「暗い絵」はこちら
→ http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2012-09-21
さいごに。(両親、ヨーロッパ旅行から帰る)
フランス、スイス、ドイツを回って、8日間の旅から、両親が帰ってきました。
初めての海外だったため、心配しましたが、「とても楽しかった」とのこと。
父は「モンサンミシェル」が、母は「すべて」が、良かったと言っています。
そして、ヨーロッパのおかしを、たくさんおみやげに買ってきてくれました。