Quantcast
Channel: 文庫で読む文学全集
Viewing all articles
Browse latest Browse all 714

幼年時代(カロッサ)

$
0
0

 「幼年時代」 カロッサ作 斎藤栄治訳 (岩波文庫)


 自身の誕生から小学校時代までを描いた、自伝的な短編小説集です。
 カロッサは、トーマス・マンやヘッセと同時期の作家です。

 カロッサの作品は、昨年2012年から随時改版が出て、読みやすくなっています。
 ただし、初版は1953年。訳は古くて、所々に分かりにくい部分があります。


幼年時代 (岩波文庫)

幼年時代 (岩波文庫)

  • 作者: カロッサ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1953/06/05
  • メディア: 文庫



 誕生から時間にそって、16編の短編が収められています。
 それぞれが独立しながら、全体としてしっかりまとまっています。

 主な登場人物は3人。主人公は、町医者の幼い息子「私」。
 敵役の腕白坊主「ライジンガ」。なぜか気の合う少女「エヴァ」。

 特に印象に残っているのは、「魔術師」「復讐」「供物を献げて」。
 もちろん、上記の3人が登場します。
 この三編だけ読んでも、この作品の魅力は充分伝わると思います。

 作品全体を通して、とても懐かしいような物悲しさに包まれています。
 また、作者カロッサの、優しくて誠実な人柄が感じられます。

 カロッサは、父親を継いで町医者となり、人々に尽くす多忙な日々を送りました。
 この作品は、第一次対戦中、軍医として戦地を転々としながら書き継がれました。

 そういう混乱の中で書かれながら、書かれたものは実に美しい。
 この美しさは、カロッサの人間性からきているように思います。

 解説に次のように書いてあるので、原文で読みたくなります。(無理)
 「カロッサの文体は、たとえていえば、淡い緑の微光をはなつ透明な宝石のよう
 です。そしてこの宝石は、見かけよりは意外に硬質の石なのです。」(P232)

 カロッサの作品は、ほかにも岩波文庫からいくつか出ています。
 「幼年時代」の続編で、いずれも自伝的小説です。


若き日の変転 (岩波文庫)

若き日の変転 (岩波文庫)

  • 作者: カロッサ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1955/10/25
  • メディア: 文庫



指導と信従 (岩波文庫)

指導と信従 (岩波文庫)

  • 作者: カロッサ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2012/09/15
  • メディア: 文庫



美しき惑いの年 (岩波文庫)

美しき惑いの年 (岩波文庫)

  • 作者: カロッサ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1954/07/05
  • メディア: 文庫



 しかし私は、「ルーマニア日記」を読みたい。贅沢だろうか。
 ぜひ、新訳化してほしい。


ルーマニア日記 (岩波文庫 赤 436-2)

ルーマニア日記 (岩波文庫 赤 436-2)

  • 作者: カロッサ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1953/03/05
  • メディア: 文庫



 さいごに。(旗振り当番)

 金曜日に、朝の旗振り当番をやりました。
 普段見られない、子供たちの登校の様子が見られて、楽しかったです。

 娘は、予想以上に元気よく登校。あの姿を写真に撮りたかった。
 実は、カメラを持って行こうとしたら、「へんな人だと思われるからやめて」
 と妻に言われて、止められたのです。

Viewing all articles
Browse latest Browse all 714