「幼年時代」 カロッサ作 斎藤栄治訳 (岩波文庫)
自身の誕生から小学校時代までを描いた、自伝的な短編小説集です。
カロッサは、トーマス・マンやヘッセと同時期の作家です。
カロッサの作品は、昨年2012年から随時改版が出て、読みやすくなっています。
ただし、初版は1953年。訳は古くて、所々に分かりにくい部分があります。
誕生から時間にそって、16編の短編が収められています。
それぞれが独立しながら、全体としてしっかりまとまっています。
主な登場人物は3人。主人公は、町医者の幼い息子「私」。
敵役の腕白坊主「ライジンガ」。なぜか気の合う少女「エヴァ」。
特に印象に残っているのは、「魔術師」「復讐」「供物を献げて」。
もちろん、上記の3人が登場します。
この三編だけ読んでも、この作品の魅力は充分伝わると思います。
作品全体を通して、とても懐かしいような物悲しさに包まれています。
また、作者カロッサの、優しくて誠実な人柄が感じられます。
カロッサは、父親を継いで町医者となり、人々に尽くす多忙な日々を送りました。
この作品は、第一次対戦中、軍医として戦地を転々としながら書き継がれました。
そういう混乱の中で書かれながら、書かれたものは実に美しい。
この美しさは、カロッサの人間性からきているように思います。
解説に次のように書いてあるので、原文で読みたくなります。(無理)
「カロッサの文体は、たとえていえば、淡い緑の微光をはなつ透明な宝石のよう
です。そしてこの宝石は、見かけよりは意外に硬質の石なのです。」(P232)
カロッサの作品は、ほかにも岩波文庫からいくつか出ています。
「幼年時代」の続編で、いずれも自伝的小説です。
しかし私は、「ルーマニア日記」を読みたい。贅沢だろうか。
ぜひ、新訳化してほしい。
さいごに。(旗振り当番)
金曜日に、朝の旗振り当番をやりました。
普段見られない、子供たちの登校の様子が見られて、楽しかったです。
娘は、予想以上に元気よく登校。あの姿を写真に撮りたかった。
実は、カメラを持って行こうとしたら、「へんな人だと思われるからやめて」
と妻に言われて、止められたのです。