「カリギュラ」 カミュ作 岩切正一郎訳 (ハヤカワ演劇文庫)
第3代ローマ皇帝カリギュラの、苦悩と狂気を描いた戯曲です。
2007年に蜷川幸雄の演出で公演されて、話題になりました。
2008年にハヤカワ演劇文庫から出ました。新訳です。
訳は2007年の上演台本をもとにしています。

アルベール・カミュ (1) カリギュラ (ハヤカワ演劇文庫 18)
- 作者: アルベール・カミュ
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2008/09/25
- メディア: 文庫
皇帝カリギュラは、最愛の妹ドリュジラを亡くし、そのまま3日間失踪します。
戻ってきたカリギュラは、狂気の暴君に変貌していました。
「太陽を東に沈ませ、苦しみを減らし、人を不死にする、それができないのなら、
驚くべきこの権力が何になる。」(P37)
妹(情婦でもあった)の死の前で、自分の無力を悟ったカリギュラ。
権力を持っているからからこそ、破滅へ向かわずにはいられない。
自ら進んで破滅へ突き進む。その運命から逃れられない。
なんという不条理! ばかばかしくて、泣けてきます。
理由なく人民の財産を没収し、家臣を殺し、わざと飢饉をおこし・・・
でもカリギュラがもっとも憎んでいたのは、自分自身だったのではないだろうか。
さて、カミュは、「ローマ皇帝伝」を読んで、カリギュラに興味を持ったそうです。
たしかに「ローマ皇帝伝」におけるカリギュラの残虐性は、とても強烈でした。
「ローマ皇帝伝」 → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2013-10-21
しかし、なんといっても興味深いのは、もともと模範的な人間だったことです。
皇帝になった当時、周りからとても期待されていました。
ではなぜ、後世に名を残すほどの暴君になったのか。
それを解き明かしたのが本書「カリギュラ」。一読の価値ありです。
ところで、カミュといったら「異邦人」。文句なしの名作です。
「異邦人」 → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2010-07-07
さて、あとがきによると、「カリギュラ」上演当時、神田の古本街から、
新潮版の「カリギュラ」が無くなったそうです。(すごい反響)
その舞台を見てみたいと、ちょっとだけ思いました。
でも、DVDは182分。すんなり諦めました。絶対、寝ちゃいます。
さいごに。(今年もあとわずか)
今年も、残すところあとわずかです。
娘が、何か一生懸命に書いていたので、のぞいてみると・・・
「今年の10大ニュース」を書いていました。すぐに隠されましたが。
小学校入学、七五三、夏の旅行などが、入っていると思われます。