Quantcast
Channel: 文庫で読む文学全集
Viewing all articles
Browse latest Browse all 714

カリギュラ

$
0
0

 「カリギュラ」 カミュ作 岩切正一郎訳 (ハヤカワ演劇文庫)


 第3代ローマ皇帝カリギュラの、苦悩と狂気を描いた戯曲です。
 2007年に蜷川幸雄の演出で公演されて、話題になりました。

 2008年にハヤカワ演劇文庫から出ました。新訳です。
 訳は2007年の上演台本をもとにしています。


アルベール・カミュ (1) カリギュラ (ハヤカワ演劇文庫 18)

アルベール・カミュ (1) カリギュラ (ハヤカワ演劇文庫 18)

  • 作者: アルベール・カミュ
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2008/09/25
  • メディア: 文庫



 皇帝カリギュラは、最愛の妹ドリュジラを亡くし、そのまま3日間失踪します。
 戻ってきたカリギュラは、狂気の暴君に変貌していました。

 「太陽を東に沈ませ、苦しみを減らし、人を不死にする、それができないのなら、
 驚くべきこの権力が何になる。」(P37)

 妹(情婦でもあった)の死の前で、自分の無力を悟ったカリギュラ。
 権力を持っているからからこそ、破滅へ向かわずにはいられない。

 自ら進んで破滅へ突き進む。その運命から逃れられない。
 なんという不条理! ばかばかしくて、泣けてきます。

 理由なく人民の財産を没収し、家臣を殺し、わざと飢饉をおこし・・・
 でもカリギュラがもっとも憎んでいたのは、自分自身だったのではないだろうか。

 さて、カミュは、「ローマ皇帝伝」を読んで、カリギュラに興味を持ったそうです。
 たしかに「ローマ皇帝伝」におけるカリギュラの残虐性は、とても強烈でした。
 「ローマ皇帝伝」 → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2013-10-21

 しかし、なんといっても興味深いのは、もともと模範的な人間だったことです。
 皇帝になった当時、周りからとても期待されていました。

 ではなぜ、後世に名を残すほどの暴君になったのか。
 それを解き明かしたのが本書「カリギュラ」。一読の価値ありです。

 ところで、カミュといったら「異邦人」。文句なしの名作です。
 「異邦人」 → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2010-07-07

 さて、あとがきによると、「カリギュラ」上演当時、神田の古本街から、
 新潮版の「カリギュラ」が無くなったそうです。(すごい反響)

 その舞台を見てみたいと、ちょっとだけ思いました。
 でも、DVDは182分。すんなり諦めました。絶対、寝ちゃいます。

 さいごに。(今年もあとわずか)

 今年も、残すところあとわずかです。
 娘が、何か一生懸命に書いていたので、のぞいてみると・・・

 「今年の10大ニュース」を書いていました。すぐに隠されましたが。
 小学校入学、七五三、夏の旅行などが、入っていると思われます。

Viewing all articles
Browse latest Browse all 714

Trending Articles