「シッダルタ」 ヘッセ作 手塚富雄訳 (岩波文庫)
青年シッダルタが、様々な体験を通して、悟りの境地へ至るまでの物語です。
ノーベル賞作家ヘッセの代表作のひとつです。
岩波文庫と新潮文庫から出ています。私が読んだのは岩波文庫版。
岩波文庫の手塚訳は名訳。流れるような原文のリズムが、生かされています。
新潮文庫版の高橋健二訳も、良い訳だと思います。
私は「シッダルタ」以外のヘッセ作品は、新潮文庫の高橋訳で読んでいます。
「蔭なす我が家のほとりに、日あたる川岸の小舟のかたわらに、沙羅の森、
無花果の木蔭に、婆羅門の美しい子、若き鷹、シッダルタは・・・」(岩波版)
この美しい冒頭によって、我々はいっきに古代インドの世界にいざなわれます。
最初は少しとっつきにくいけれど、やがてこのリズムが、心地よくなります。
主人公シッダルタは、バラモンの教えに飽き足りません。
あるとき、親友ゴヴィンダとともに家を出て、遍歴の者たちの中に交じります。
やがてシッダルタは、釈迦族のゴータマを知るようになります。
そして、その教えを受けるようになり・・・ここで私は、びっくり!
私はてっきり、「シッダルタ」=「ゴータマ」だと思っていました。
だから、この作品は、仏陀の物語だと思っていたのです。
でも、作中のシッダルタは、ゴータマ・シッダルタではなかったのですね。
んー、ややこしい。仏陀の出家前の名前と、同じ名前の青年だったのか。
冒頭に、「婆羅門(バラモン)の子」とあるから、ここで気づくべきだった。
さて、シッダルタはあっけなくゴータマと別れ、物語は意外な展開に。
次に彼が師としたのは、なんと・・・ここで私は、またもやびっくり!
というわけで、物語は私の想定と、まったく違っていました。
しかし、スピリチュアルな内容を含んでいて、とても美しい物語でした。
第一部の最後で、シッダルタが覚醒していく場面が、素晴らしかったです。
ヘッセは、インド思想を随分研究したようです。
青年時代に読んだ「車輪の下」や「デミアン」も読み直したいです。
内容をほとんど忘れてしまっているので。
さいごに。(25m泳ぐ)
娘はスイミングに通っているのですが、とうとう25m泳げるようになりました。
自分が25m泳いだのは、2年か3年の時だったで、少し驚いています。