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Channel: 文庫で読む文学全集
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魔の山

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 「魔の山」 トーマス・マン作 高橋義孝訳 (新潮文庫)


 ダボスのサナトリウムに、7年間滞在することになった一青年の物語です。
 ドイツ教養小説の伝統に則った作品で、マンの長編小説の代表作です。

 新潮文庫と岩波文庫から出ています。 どちらも二分冊。
 私には、新潮文庫の高橋訳の方が分かりやすかったです。表紙もカッコいい。


魔の山 (上巻) (新潮文庫)

魔の山 (上巻) (新潮文庫)

  • 作者: トーマス・マン
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1969/02/25
  • メディア: 文庫



 しかし、岩波文庫版の古風な訳の方が、味があっていいという人もいます。
 直訳っぽい方が好きな人は、こちらがいいかも。


魔の山〈上〉 (岩波文庫)

魔の山〈上〉 (岩波文庫)

  • 作者: トーマス マン
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1988/10/17
  • メディア: 文庫



 ハンス・カストルプが、スイスのダボスに到着するところから、物語が始まります。
 3週間の予定で、いとこのヨーアヒムのいる山の上のサナトリウムに滞在します。

 世間と隔絶されたここは、一種の別天地。下界と違う時間が流れています。
 世界各国からここに集う人々は、みなどこか世間離れしています。

 中でもひときわ目立つのが、自称人文学者・教育者のセテムブリーニ。
 ここで治療を受ける身でありながら、ここの医者を「悪魔の手代」だと言います。
 しかも本人は大まじめ。ちょっと道化的な人物です。

 次に、医者のクロコフスキー。
 治療する身でありながら、「病気は仮面をかぶった愛だ」と病気を礼賛しています。
 もちろん本人は大まじめ。彼もまた道化の素質が充分にあります。

 しかし、最大の道化は、主人公ハンスでしょう。
 いとこを見舞うはずが、いつしか自分自身が患者となり、滞在期間は7年に。

 要するに、ミイラ取りがミイラになったわけです。
 しかも、ショーシャ夫人への恋に溺れ、我を忘れて・・・ああ、ハズカシ。

 まさにここは「魔の山」。死の世界の境界上にある世界です。
 この山の毒気に当たって、ハンスも魔の山の住人になってしまったのか。

 さて、現在「上巻」の700ページ余りが、ようやく終わったところです。
 実に面白いです。私もハンス同様、魔の山の住人になりつつあります。

 ところで、気になるのは物語の進み具合。
 上巻が終わったのに、物語は半年ほどしかたっていません。下巻はどうなる?

 さいごに。(大掃除スタート)

 一昨日の土曜日に、我が家の大掃除がスタートしました。
 今後、年末まで、少しずつちょこちょことやっていきます。

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