「魔の山」 トーマス・マン作 高橋義孝訳 (新潮文庫)
ダボスのサナトリウムに、7年間滞在することになった一青年の物語です。
ドイツ教養小説の伝統に則った作品で、マンの長編小説の代表作です。
新潮文庫と岩波文庫から出ています。 どちらも二分冊。
私には、新潮文庫の高橋訳の方が分かりやすかったです。表紙もカッコいい。
しかし、岩波文庫版の古風な訳の方が、味があっていいという人もいます。
直訳っぽい方が好きな人は、こちらがいいかも。
ハンス・カストルプが、スイスのダボスに到着するところから、物語が始まります。
3週間の予定で、いとこのヨーアヒムのいる山の上のサナトリウムに滞在します。
世間と隔絶されたここは、一種の別天地。下界と違う時間が流れています。
世界各国からここに集う人々は、みなどこか世間離れしています。
中でもひときわ目立つのが、自称人文学者・教育者のセテムブリーニ。
ここで治療を受ける身でありながら、ここの医者を「悪魔の手代」だと言います。
しかも本人は大まじめ。ちょっと道化的な人物です。
次に、医者のクロコフスキー。
治療する身でありながら、「病気は仮面をかぶった愛だ」と病気を礼賛しています。
もちろん本人は大まじめ。彼もまた道化の素質が充分にあります。
しかし、最大の道化は、主人公ハンスでしょう。
いとこを見舞うはずが、いつしか自分自身が患者となり、滞在期間は7年に。
要するに、ミイラ取りがミイラになったわけです。
しかも、ショーシャ夫人への恋に溺れ、我を忘れて・・・ああ、ハズカシ。
まさにここは「魔の山」。死の世界の境界上にある世界です。
この山の毒気に当たって、ハンスも魔の山の住人になってしまったのか。
さて、現在「上巻」の700ページ余りが、ようやく終わったところです。
実に面白いです。私もハンス同様、魔の山の住人になりつつあります。
ところで、気になるのは物語の進み具合。
上巻が終わったのに、物語は半年ほどしかたっていません。下巻はどうなる?
さいごに。(大掃除スタート)
一昨日の土曜日に、我が家の大掃除がスタートしました。
今後、年末まで、少しずつちょこちょことやっていきます。