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デミアン

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 「デミアン」 ヘッセ作 高橋健二訳 (新潮文庫)


 青年シンクレールが、年上の友人デミアンに導かれながら成長していく物語です。
 心理学や東洋思想の影響が見られ、ヘッセにとって転換点となる作品です。

 現在、新潮文庫と岩波文庫から出ていますが、どちらも訳が古すぎます。
 私が読んだ新潮文庫版は、初版が1951年。岩波文庫版も、初版は1959年。
 どちらも読みにくい箇所がありますが、それほどストレスは感じませんでした。


デミアン (新潮文庫)

デミアン (新潮文庫)

  • 作者: ヘッセ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1951/12/04
  • メディア: 文庫



デミアン (岩波文庫)

デミアン (岩波文庫)

  • 作者: ヘルマン ヘッセ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1959/04/05
  • メディア: 文庫



 シンクレールは10歳の頃、つまらない嘘をついて、悪童に脅されてしまいました。
 それを助けてくれたのが、年上の少年デミアンです。

 二人は友達になりました。
 その後も人生の大事な折々に、デミアンはシンクレールを導いていきます・・・

 とても不思議な印象が残る小説です。
 特に、デミアンの持つ不思議な魅力が大きいです。

 デミアンは言います。
 この世界には、「公認された神の世界と黙殺された悪魔の世界」がある。
 「そこでつまり、神の礼拝とならんで悪魔の礼拝を行わなければならない。」(P94)

 人間にも、神と悪魔の両面があり、その両面に目を向けるべきだと、言うのです。
 なるほど。「デミアン」という名前は、「デーモン」からきているようです。

 この小説のキーワードは、「カイン」と「アプラクサス」。
 いずれも、キリスト教的には異端となっている信仰です。

 これが書かれた当時は第一次大戦中。キリスト教徒同士で殺しあっていました。
 この状況に絶望したヘッセは、これらの神々に救いを見出そうとしました。

 こうしてヘッセは、東洋思想へ接近していきます。
 デミアンが瞑想したり、未来を予言したりするのも、東洋思想の影響のようです。
 そして、日本人にヘッセのファンが多い理由は、そういうところにもあるようです。

 ところが・・・エヴァ夫人が登場すると、物語はあらぬ方向に進んでしまいました。
 「そりゃないだろう!」という展開です。

 ヘッセの熟女趣味が、うっかり出てしまったのか。
 最後の最後で、作品の完成度を、著しく下げてしまった。実に惜しい!

 さて、ヘッセの作品は、ほかにも多数文庫本になっています。
 その中でも、「郷愁」と「車輪の下」は読んでおきたいです。


郷愁―ペーター・カーメンチント (新潮文庫)

郷愁―ペーター・カーメンチント (新潮文庫)

  • 作者: ヘッセ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1956/09/04
  • メディア: 文庫



車輪の下 (新潮文庫)

車輪の下 (新潮文庫)

  • 作者: ヘルマン ヘッセ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1951/12/04
  • メディア: 文庫



 さいごに。(新春健康マラソン)

 1月2日は、娘と一緒に、地元の「新春健康マラソン」に出てみました。
 富士山を遠くに眺めながら走るのは、気持ちが良かったです。

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