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Channel: 文庫で読む文学全集
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ワーニャ伯父さん

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 「ワーニャ伯父さん・三人姉妹」 チェーホフ作 浦雅春訳 (古典新訳文庫)


 「ワーニャ伯父さん」は、薄幸の人生に耐えて、働き続けるワーニャの物語です。
 「三人姉妹は」は、田舎暮らしを送る三姉妹の、恋と失望の物語です。
 どちらも、チェーホフの四台戯曲の一つです。

 現在二作とも、古典新訳文庫と、新潮文庫で、読むことができます。
 古典新訳文庫の浦訳は、新訳で分かりやすかったです。
 カバーイラストも、古典新訳文庫にしては、いい感じです。


ワーニャ伯父さん/三人姉妹 (光文社古典新訳文庫)

ワーニャ伯父さん/三人姉妹 (光文社古典新訳文庫)

  • 作者: アントン・パーヴロヴィチ チェーホフ
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2009/07/09
  • メディア: 文庫



 新潮文庫の神西訳は、少し古さを感じました。
 しかし、その言葉使いに、時代を超えた美しさがあり、根強いファンが多い。


かもめ・ワーニャ伯父さん (新潮文庫)

かもめ・ワーニャ伯父さん (新潮文庫)

  • 作者: チェーホフ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1967/09
  • メディア: 文庫



 「ワーニャ伯父さん」は、ワーニャが、客にうんざりする場面から始まっています。
 客というのは、ワーニャの死んだ妹の夫で、退職した大学教授セレブリャコフ。

 定年で帰郷した元教授は、独創性のかけらもない、凡俗な男でした。
 このニセ学者に、ワーニャは、領地での儲けを全て仕送ってきたのです。

 彼に期待をかけて、馬車馬のように働いてきた自分は、いったい何だったのか。
 ワーニャは、自分の青春が、むなしく過ぎ去っていったことを、痛切に感じました。

 しかし、そのワーニャの前で、老教授が出した提案は…
 そして、それに続くワーニャの狂乱…

 なんともやりきれない結末です。
 しかし、優しいソーニャの存在が、唯一の救いです。

 もうひとつの「三人姉妹」も、むなしく過ぎ去る青春をテーマにしています。
 故郷モスクワへ帰ることを夢見ながら、三姉妹は一地方都市に埋もれてしまう。

 それを決定的にしたのが、優柔不断な長男のアンドレイ。
 彼は、その土地の軽薄な娘ナターシャと、結婚してしまったのです。

 あとになって、アンドレイは嘆きます。
 「現在と未来が希望にかがやいていたあの過去はどこに消えたんだ?」(P291)
 私は言ってやりたい。ばかだね、あんたが自分で放り出したんじゃないか!

 そして姉妹も、三者三様に希望を失っていき…
 これまた、じつに哀切な結末です。

 しかし、「ワーニャ伯父さん」も「三人姉妹」も、「それでも生きて行かなくては」
 という言葉で締めくくられています。ここに、チェーホフの主張がありそうです。

 さいごに。(タツノオトシゴ)

 ちょっと前のことですが、しらすを食べていると、娘が「エビ!」と言いました。
 よく見てみると、体が巻いていて、エビらしくはありません。
 どうも、タツノオトシゴの赤ちゃんのようなのです。
 
 しらすにエビが混じっていることは、よくあるけど、タツノオトシゴは初めてです。
 タツのように娘の運気も上がってほしい。しかし辰年も、もう終わりですね。

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