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ある婦人の肖像2

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 「ある婦人の肖像」 ヘンリー・ジェイムズ作 行方昭夫訳 (岩波文庫)


 (注意。前回の記事の続きです。今回の記事も、ネタバレが多めです。)

 若くて美しくて知的なアメリカ人女性が、ヨーロッパで人生を探求する物語です。
 作者の代表作です。「ある貴婦人の肖像」というタイトルで、映画化されました。

 岩波文庫から、行方訳が出ていますが、現在品切れです。重版を強く願う!
 1985年に国書刊行会から出たものの改訳で、とても味わいのある訳です。


ある婦人の肖像 (上) (岩波文庫)

ある婦人の肖像 (上) (岩波文庫)

  • 作者: ヘンリー・ジェイムズ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1996/12/16
  • メディア: 文庫



ある婦人の肖像 (中) (岩波文庫)

ある婦人の肖像 (中) (岩波文庫)

  • 作者: ヘンリー・ジェイムズ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1996/12/16
  • メディア: 文庫



ある婦人の肖像 (下) (岩波文庫)

ある婦人の肖像 (下) (岩波文庫)

  • 作者: ヘンリー・ジェイムズ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1996/12/16
  • メディア: 文庫



 ようやく下巻を読み終わりました。
 期待通りに、最後まで面白かったです。いや、期待以上に面白かったです。

 この本を品切れにしておくなんて、本当にもったいない。
 もっともっと読まれていい作品です。

 さて、私はいつのまにかこの作品を、ラルフに感情移入して読んでいました。
 気づくと、「ラルフのプラトニックラブの物語」として、読んでいたのです。

 誠実で繊細なラルフは、どんなことがあっても、イザベルを見捨てません。
 イザベルのことを本当に理解していて、一番愛していたのは、ラルフでしょう。

 ラルフの死の場面は、強烈な印象が残ります。
 彼は、死によって、イザベルへの愛を完成させたのだと思います。

 ところで、よく問題になるのが、ラストシーンの解釈です。
 イザベルは、ローマに戻って、どうなるのか?

 ローマに戻ってオズモンドとの生活を続ける、という解釈には賛成できません。
 それでは、ラルフの愛と死の意味が、無くなってしまいます。

 ローマに戻ってオズモンドと対決し、二人の関係に決着をつける。(離婚する)
 ラルフの死後も、その愛を身近に感じたイザベルは、きっとそうしますよ。

 イザベルとオズモンドとの対決は、ローマを出たときに既に始まっています。
 その対決に決着をつける勇気を与えたのは、ラルフの死だったのではないか。
 (直接のきっかけは、グッドウッドの3度目の求婚であるが)

 ほかにも魅力的な登場人物はいます。たとえば、ウォーバトンとグッドウッド。
 この二人の求婚者は、タイプが全く異なっていて面白いです。

 また、オズモンドとマダム・マールは、実に生き生きと描かれています。
 「危険な関係」を思い出しました。こういう悪役(?)が、物語を面白くします。

 しかし、何といっても興味深いのが、イザベルの友人で新聞記者のヘンリエッタ。
 彼女は何でもズケズケ言い、あつかましくて、時には滑稽でさえあります。

 しかし彼女の言い分は、よくよく考えると、それほど的外れではありません。
 それどころか、ラルフが言えないことを、はっきり伝える役目を果たしています。

 ヘンリエッタは、イザベルの分身のような存在ではないかと思います。
 イザベルの無意識を顕在化したような存在。だから、二人は仲良しなのでしょう。

 余談ですが、私はこの本に、注釈がないことが、潔くて好ましく感じました。
 ただし、フローレンスがフィレンツェだということに、最後まで気付かなかった。

 本の中巻のカバーが、なぜフィレンツェなのかと、不思議に思っていたのです。
 フローレンスは、辞書にも載っていません。これだけは、注がほしかった。

 さいごに。(さよならエラー)

 職場対抗のソフトボール大会に参加しました。私はライトの6番。
 6対5のリードで迎えた最終回のウラ。相手の攻撃で2アウト満塁。

 打球が私に向かって飛んできました。追いついてキャッチ。
 と思ったら、グラブからボールがポロリ。敵軍の2者がかえって、サヨナラ負け。

 でも、私は全く責められませんでした。というのも、勝っていたらもう一戦。
 しかし、我が軍にはもう余力がなくて、みんな家に帰りたがっていたので。

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