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ジョゼフ・フーシェ

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 「ジョゼフ・フーシェ」 ツヴァイク作 高橋禎二・秋山英夫訳 (岩波文庫)


 仏革命から続く混乱期に、秘密警察を使ってのし上がったフーシェの伝記です。
 バルザックの小説「暗黒事件」から、大きな影響を受けたと言われています。

 岩波文庫から出ています。1951年に出た旧訳を、秋山氏が修正したものです。
 文章は分かりやすくて、ツヴァイク特有の味わいがありました。


ジョゼフ・フーシェ―ある政治的人間の肖像 (岩波文庫 赤 437-4)

ジョゼフ・フーシェ―ある政治的人間の肖像 (岩波文庫 赤 437-4)

  • 作者: シュテファン・ツワイク
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1979/03/16
  • メディア: 文庫



 かつてロベスピエールと親交を結びながら、後には彼を破滅に追いやった男。
 かつてバラーによって恩を施されながら、後には彼をパリから追放した男。

 皇帝ナポレオンのもとで重用されながら、その皇帝を失脚に導いた男。
 王に 、共和政府に、総裁政府に、統領政府に、皇帝に、再び王に仕えた男。

 この作品の副題は「ある政治的人間の肖像」です。
 フーシェは混乱期を謀略によって切り抜けた、まさに「政治的人間」でした。

 ライバルが争っている間は態度は保留して、こっそり情勢を窺っています。
 決着がほとんどついたところで、突然登場して勝ち馬に乗ってしまいます。

 日和見主義? いえいえ、もっとひどい。これは、あと出しジャンケンです。
 この戦術で、負けるはずはありません。

 情勢を見極めるために、フーシェが存分に活用したのが秘密警察です。
 フーシェといえば、秘密警察。秘密警察といえば、フーシェ。

 フーシェは秘密警察を使い、自分のための巨大で緻密な情報網を組織します。
 そしてフーシェは秘密警察を使い、皇帝に挑戦さえしてしまう!

 特に面白かったのは、 警務大臣フーシェと皇帝ナポレオンの闘争でした。
 この二人の関係は、実に興味深いです。

 「心の中では嫌いで嫌いでたまらないのに、ただただ反対の両極の牽引性に
 よって結ばれて、二人は互いに相手を利用していたのである。」(P215)

 「十年にわたるはげしい敵意が、人と人とを結びつけるありさまは、
 生半可な友情以上にふしぎなものがある。」(P325)

 ところで、フーシェの行動で、どうもよく分からないことがあります。
 ようやく総裁の地位につきながら、なぜあっさりと王政に譲ったのか?

 それは、ナポレオンが没落して、フーシェの勝運も尽きたからではないか。
 ナポレオンの運気とフーシェの運気は、補い合っていたのではないか。

 さて、作者ツヴァイクの文章は、とても味わい深かったです。
 かみしめながら少しずつ読んだため、なかなか進みませんでした。

 ツヴァイクにはもうひとつ、フランス革命期の伝記があります。
 「マリー・アントワネット」です。読むのが楽しみです。


マリー・アントワネット 上 (角川文庫)

マリー・アントワネット 上 (角川文庫)

  • 作者: シュテファン ツヴァイク
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2007/01
  • メディア: 文庫



 私がフーシェに興味を持ったのは、この本からです。オススメです。
 「ナポレオン フーシェ タレーラン」鹿島茂(講談社学術文庫)
 → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2012-08-24

 ナポレオン、フーシェ、タレーラン。彼らがこれほど人を魅了するのはなぜか。
 それは、その偉業もさることながら、彼らが大ばくちを打ったからではないか。
 
 フランス、ヨーロッパ、世界を相手に、彼らは途方もなくでっかい大ばくちを
 打ったが、そのことが我々(特に男たち)の心を燃えさせるのではないか・・・

 さいごに。(シュート2本)

 サッカー大会の第2戦も、わずか15分の出場でした。
 今回は2本のシュートを放ちました。しかし、ボテボテのシュートでした。

 もう1人のFWに「先輩のパスに合わせられなくてすみません」と言われた。
 パスじゃない。あれはシュートだっちゅーに・・・試合は完敗。

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