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平凡物語

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 「平凡物語」 ゴンチャロフ作 井上満訳 (岩波文庫)


 田舎育ちの青年の希望が、都会生活の中で、徐々に打ち砕かれていく物語です。
 ドストエフスキーとほぼ同時期に活躍した作家、ゴンチャロフの出世作です。

 2010年に、岩波文庫から出ています。
 1952年に出た翻訳ですが、少しも古さを感じません。読みやすかったです。


平凡物語(上) (岩波文庫)

平凡物語(上) (岩波文庫)

  • 作者: ゴンチャロフ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2010/06/17
  • メディア: 文庫



 都会生活に憧れる青年アレクサンドルは、叔父を頼ってペテルブルクに出てきます。
 叔父ピョートルは、甥のアレクサンドルに、さまざまなことを教えます。

 叔父ピョートルは、経験豊富な実際家。甥ピョートルは、ロマンチックな空想家。
 この二人の会話がかみ合わなくて、面白い面白い。

 夢や希望を語る甥に対して、叔父は「田舎に帰った方がいい」と、平気で言います。
 叔父に悪気はありません。それどころか、その忠告の正しさは徐々に証明されます。

 当初、自分の才能の豊かさと、精神の高潔さを信じていたアレクサンドルでしたが、
 都会生活の8年の間に、少しずつ叔父に影響され、周りに染まっていき…

 そして、とうとう … ああ、平凡物語!
 エピローグでの、アレクサンドルの変わりようには、力が抜けてしまいます。

 さて、この小説は二部構成になっていますが、前半「第一部」の方が断然面白い。
 特に、第2章と第3章が読みどころ。叔父と甥の会話は、まるで漫才です。

 作者ゴンチャロフは、出世作「平凡物語」を書いたとき、まだ20代の初めでした。
 代表作「オブローモフ」を書いたのは、それから25年後で40代後半のこと。

 「オブローモフ」は、ロシア文学の伝統「余計者」を描いた典型的な作品です。
 この傑作を、どうしても読みたいのですが、岩波文庫版は絶版で品切れ状態。

 「オブローモフ」から更に10年後、最後の傑作「断崖」が書かれました。
 「断崖」は、岩波文庫から、改版の全5冊が、最近完結したばかりです。


オブローモフ〈上〉 (岩波文庫)

オブローモフ〈上〉 (岩波文庫)

  • 作者: ゴンチャロフ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1976/02/16
  • メディア: 文庫




断崖(一) (岩波文庫)

断崖(一) (岩波文庫)

  • 作者: ゴンチャロフ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2010/09/17
  • メディア: 文庫



 さいごに。(妻のカゼが治ったとたんに)

 妻が1週間ほどカゼをひいていました。
 その間、娘はとても良い子で、進んでお手伝いをしたりしていました。

 しかし、妻のカゼが治ったとたん、わがままになり、いばるようになりました。
 それまで、娘なりにいろいろと、我慢していたのでしょうね。

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