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Channel: 文庫で読む文学全集
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太陽の塔

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 「太陽の塔」 森見登美彦 (新潮文庫)


 別れた彼女のことを研究し続けている、大学5回生で休学中の「私」の物語です。
 作者が院生時代に書いたデビュー作であり、ファンタジーノベル大賞受賞作です。

 新潮文庫から出ています。
 カバーが作品の雰囲気をよく伝えています。


太陽の塔 (新潮文庫)

太陽の塔 (新潮文庫)

  • 作者: 森見 登美彦
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2006/06/01
  • メディア: 文庫



 女性に縁の無かった「私」は、大学3回生の時に水尾さんという彼女ができました。
 しかし彼女には振られ、「私」は大学5回生になり、しかも休学しています。

 水尾さんと別れてから、「私」はこっそりと「水尾さん研究」を継続してきました。
 今日も、水尾さんが現れるはずの場所へ、ひそかにやってきましたが・・・

 そこに現れた遠藤という男は、水尾さんの何なのか?
 水尾さんと太陽の塔には、どのような関係があるのか?

 「たかがファンタジー小説」という、軽い気持ちで手に取ることなかれ。
 冒頭からいきなり、頭をガツンと(しかし心地よく)やられます。

 「何かしらの点で、彼らは根本的に間違っている。
  なぜなら、私が間違っているはずがないからだ。」(P5)

 この作品の魅力は文体にあります。森見独特の文体です。
 まじめな顔をして冗談を言うような文体で、クスクス笑いながら読みました。

 作者は、とても意識的に自分の文体を練り上げたのではないでしょうか。
 文体の新鮮さでは、村上春樹の「風の歌を聴け」と、比肩しうると思いました。

 もう一つの魅力は、主人公と飾磨(しかま)を中心にした、はちゃめちゃな男たち。
 彼らはクリスマスイブに、四条河原町である騒動を企てて・・・

 「この壮大な無駄は何なのだろうな。何かこう、罪深いよな」
 「それが我々の戦いであった」(P143)

 彼らは京大生らしいのですが、天才とヘンタイは紙一重なのかもしれません。
 これほど才能の使い方を間違ってしまった男たちが、ほかにいるでしょうか。

 ところで、突如現れる叡山電車は、何なのでしょうか。
 それから、ラストはどういう場面を想像すれば、いいのでしょうか。

 ファンタジーを読み慣れていないせいか、よく理解できない部分がありました。
 それでも、ぜひ「四畳半神話体系」は読んでおきたいです。


四畳半神話大系 (角川文庫)

四畳半神話大系 (角川文庫)

  • 作者: 森見 登美彦
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2008/03/25
  • メディア: 文庫



 さいごに。(春休みに登校?)

 娘の小学校では、学級閉鎖をしたクラスが、春休みに登校するそうです。
 娘のクラスは、学級閉鎖にはならなかったので、娘はほっとしています。

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