「アルジャーノンに花束を」 キイス作 小尾芙佐訳 (ダニエル・キイス文庫)
知的障害を持つ青年が、手術によって天才になった後の、苦悩を描いた物語です。
何度か映画化された名作です。昨年TVドラマにアレンジされ話題になりました。
1999年にハヤカワ文庫から出ました。単行本は1989年に出ていました。
訳は分かりやすくて、活字も読みやすいです。
主人公は、32歳のパン屋の店員、チャーリイ・ゴードンです。
彼は幼児の知能しか持たないため、頭が良くなりたいと願っていました。
ある日、知能が高くなる脳手術を受けたらどうかという勧めがありました。
ネズミのアルジャーノンは、既に手術を受け、高い能力を発揮していました。
手術は成功し、チャーリイは高い知能を持ち、天才的な能力を発揮しました。
ところが、同時に彼は、様々な問題を抱えるようになり・・・
これはただのSF小説ではなく、なかなか重たいテーマを含んでいます。
知能が高くなることが、本当に幸せなのでしょうか?
以前の彼は、人にからかわれても、自分のことが好きなんだと思いました。
今では、いかに自分が馬鹿にされていたのかが分かり、怒りを覚えます。
あるとき、彼は言われました。「でもあなたは以前もっていたものを失って
しまった。あなたは笑顔をもっていた・・・」(P467)と。
また、心の奥底に眠っていた記憶も、しだいに呼び戻されます。
自分はなぜ一人なのか? 家族はどこに行ったのか?
読みながら、チャーリイの過去が少しずつ分かっていきます。
ミステリーっぽい展開で、物語にぐいぐい引き込まれます。
やがて、ネズミのアルジャーノンに変化が訪れ・・・
そして、研究の盲点を自身で明らかにし・・・
最後は、涙無しには読めません。
この作品が、何度も映画化、ドラマ化、舞台化された理由がよく分かります。
さて、作者ダニエル・キイスは、この作品ののちも様々な名作を書きました。
早川書房には、「ダニエル・キイス文庫」という、個人シリーズまであります。
さいごに。(1週間ぶり)
娘は1週間ぶりに学校へ行きました。
インフルエンザは終息に向かっていて、今日の欠席は1人だけだったそうです。