「夜のピクニック」 恩田陸 (新潮文庫)
夜を徹して歩きぬく歩行祭を通して、高校生の特別な一昼夜を描いた青春小説です。
2004年の第2回本屋大賞に選ばれた傑作です。新潮文庫から出ています。
北高の伝統行事「歩行祭」は、24時間ひたすら歩き続けるというものです。
高校3年生の甲田貴子は、ある決意を胸に秘めて、最後の歩行祭にのぞみました。
貴子と、同じクラスの西脇融(とおる)には、人の知らないつながりがあって・・・
融は、貴子に対するわだかまりから、彼女をずっと無視してきたが・・・
すばらしい小説です。自分が高校生の時に、この作品を読みたかった!
もし読んでいたら、これは自分の青春にとって、大事な本になっていたはずです。
「みんなで夜歩く。ただそれだけのことがどうしてこんなに特別なんだろう」
・・・その特別な一日を、自分も読みながら、味わえたように思います。
他の誰よりも意識していながら、ずっと避け合っていた二人。
その二人の心が、しだいに寄り添っていくところが、とても感動的でした。
二人をとりまく仲間たちも良い。特に、融の親友の忍と、貴子の親友の美和子。
これほど自分を理解してくれる親友は、人生におけるかけがえのない財産です。
「 — おまえさ、行っていいぞ」「行っていいぞってのは?」
ただこれだけのやりとりに、涙が出そうになりました。いいな、青春って。
「でもさ、もう一生のうちで、二度とこの場所に座って、このアングルから
この景色を眺めることなんてないんだぜ」・・・本当にいいな、青春って。
文庫本で450ページ。しかし描かれているのは、わずか24時間の出来事。
だがその24時間に、青春がギュッと凝縮されているのです。
私にとっても、青春の1日1日は本当に大切な時間だったと思い返しました。
あれから30年。高校時代の仲間とは、もうほとんど会うことがありません。
この作品で唯一の難点は、順弥の存在の不自然さです。アメリカから来たって?
順弥は重要な役割を担っているのに、リアリティーがまったく欠けています。
しかし、そういう欠点もひっくるめて、愛すべき作品だと思います。
特に、青春真っ只中の若い人たちに強く勧めたいです。
さいごに。(気がかり)
1週間後に、4年生最大のイベント「海洋自然教室」があります。
そこで気がかりなことは、消灯が10時であることです。
娘は普段9時に寝ています。たまに9時を過ぎると、眠くてフラフラになります。
そうなっては困るので、とりあえず9時半まで起きている練習をしています。