「歴史(上)」 トゥキュディデス著 小西晴雄訳 (ちくま学芸文庫)
アテネとスパルタで争われたペロポネソス戦争を、年代順に記述した歴史書です。
ヘロドトスの「歴史」と比べて、客観的で実証的な記述がなされています。
ちくま学芸文庫から全訳が出ています。50年前の本の再刊ですが分かりやすいです。
巻末には詳細な人名索引が付いていて、所々に地図もあり、理解を助けてくれます。
アテナイはデロス同盟の盟主。スパルタはペロポネソス同盟の盟主。
この二大都市は、紀元前5世紀初頭、力を合わせてペルシアを撃退しました。
しかし、シュボタの海戦、ポティダイアの戦いを経て、和約は破られて・・・
やがて、デロス同盟対ペロポネソス同盟と、戦争は全ギリシアに拡大し・・・
ペロポネソス戦争は、紀元前431年から紀元前404年まで、27年間続きました。
トゥキュディデスはそのうち21年間を記しました。彼は次のように述べています。
「アテナイの人トゥキュディデスはペロポネソス人とアテナイ人との戦いの模様を
収録した。両者が戦火を交えると、この戦いが拡大することと、それが過去を通じ
もっとも語るに価するものになることを予測して、ただちに稿を起こした。」(冒頭)
彼は、「それが過去を通じもっとも語るに価するものになることを予測して」、
以後のあらゆる戦争の成り行きの予見に役立つと考えて、これを記したのです。
そういう真面目な目的があるので、その記述は実に客観的で実証的です。
神話や伝説や、うわさ話や憶測は、できるだけ排除されています。
それゆえ、ヘロドトスに比べて簡潔で、戦争の流れがつかみやすいです。
その反面、興味本位の脱線がないため、もの足りない気もします。
それでも、楽しめる場面はたくさんありました。たとえば、第四巻のクレオン。
うっかり憎まれ口をきいたため、祭り上げられ、なぜか成功してしまい・・・
また、アテナイの事情、スパルタの事情、両方を説明している点が良かったです。
それぞれに言い分があり、それぞれが必死で取り組んでいるのが分かりました。
現在、「歴史(上)」を読み終わったところです。第五巻の途中です。
ニキアスによって和約が成立し、戦争の前期が終わりました。ひと区切りです。
人名や地名が次から次に出てきて、頭が混乱しました。
そのたびに、巻末の詳細な索引を調べたので、なかなか進みませんでした。
簡単な人名事典のようなものが、さらにありがたいと思いました。
また、もう少し詳しい地図があると、なお良かったのですが。
読む前にネット等で、ペロポネソス戦争のことを調べることをおススメします。
邪道かもしれませんが、全体像が見えてからの方が、作品を楽しめると思います。
中公クラシックス(単行本)から出ている「戦史」は、「歴史」の抄訳です。
ある程度まとまっているので、これを読めば頭が整理されるかもしれません。
さいごに。(夏休み入り)
娘は夏休みに入って、すでにコーヒー牛乳のように日焼けしました。
学校のプール解放日は、友達と長時間歩いて行って、ずっと遊んでいます。