Quantcast
Channel: 文庫で読む文学全集
Viewing all articles
Browse latest Browse all 714

ソクラテスの思い出

$
0
0
 「ソークラテースの思い出」 クセノフォーン著 佐々木理訳 (岩波文庫)


 クセノフォンが、師であるソクラテスの姿を、目にうつるがままに伝えたものです。
 ソクラテスの死後まもなく書かれた追想記で、当時の貴重な資料です。

 岩波文庫から出ています。初版は1953年です。詳細な注釈と索引が付いています。
 冒頭の「まえおき」が解説の役割を果たしています。丁寧に作られた本です。


クセノフォーン ソークラテースの思い出 (岩波文庫)

クセノフォーン ソークラテースの思い出 (岩波文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1974/12
  • メディア: 文庫



 前399年、ソクラテスはあの有名な裁判によって、毒杯を仰いで死にました。
 訴状は、「国家の認める神を信奉せず」「青年を腐敗させた」ということでした。

 そのとき著者クセノフォンは、小アジアでキュロス軍を率いていました。
 その後スパルタに亡命し、ソクラテスの生前の姿を書き綴りました・・・

 「一体いかなる言葉を用いて、ソークラテースを告発した人々は、彼が国家に対して
 死罪を犯していると、アテーナイの市民に納得させたのか、私は一度ならず不思議に
 思った。」(冒頭)

 神を敬い、青年を正しく導き、友を助け、正義を重んじ、善を愛したソクラテス!
 クセノフォンは、ソクラテスの処刑に抗議するために、この追想記を残したようです。

 エピソード集のような形態で、ソクラテスと様々な人とのやり取りが書かれています。
 プラトンの著作と違い、短い対話がたくさん集められているため、読みやすいです。

 アテナイを気ままにぶらついているような、生のままのソクラテスを感じ取れます。
 最後の第四巻のエウテュデーモンとの対話では、彼の問答の仕方がよく分かります。

 嘘をつくのは正しくないことだ、と言うと、では戦争で敵を欺くときはどうか、とか、
 薬をいやがる子供にこれは食べ物だよと偽るのはどうかとか、とてもねちっこいです。

 ソクラテスが多くの人々と対話を楽しんでい様子が、とてもよく分かる一方で、
 侮辱されたと感じて怒り出す人々の気持ちも、とてもよく分かりました。

 時にはテオドテーという絶世の美女と、おしゃべりもします。(第三巻第11章)
 要するに彼女と友達になりたかったようなのですが、彼の一面が見られて楽しいです。

 もちろん、アルキビアデスも登場します。(第一巻第2章)
 この問題児も、ソクラテスと共に生活しているときは、思慮分別を持っていたとか。

 最も印象的だったのは、賢者プロディコスによる「ヘラクレス論」なるものです。
 ヘラクレスが成人したとき、二人の婦人が現れて言うことは・・・(第二巻第1章)

 ところで、ソクラテス以上に興味深いのが、著者のクセノフォーンです。
 彼は軍人で、師ソクラテスが止めるのも聞かず、キュロス軍に参加しました。

 キュロスの反乱における脱出行を記したのが、もう一つの名著「アナバシス」です。
 「アナバシス」もまた、岩波文庫から出ています。


アナバシス―敵中横断6000キロ (岩波文庫)

アナバシス―敵中横断6000キロ (岩波文庫)

  • 作者: クセノポン
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2002/07/09
  • メディア: 文庫



 さいごに。(My Yahoo! 終了騒動)

 愛用していたMy Yahoo! が、9月29日でサービス終了になるそうです。
 Yahoo!メールは、My Yahoo!の一部だと思っていたので、私はとても焦りました。

 慌ててGメールのアカウントを取得し、My Yahoo!からの移行を進めてしまった!
 ところが、Yahoo!メールは無くならないというではないか。あーあ・・・

Viewing all articles
Browse latest Browse all 714

Trending Articles