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饗宴(プラトン)

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 「饗宴」 プラトン作 中澤務訳 (光文社古典新訳文庫)


 ある饗宴において、ソクラテスらが愛の神エロスをテーマ語り合った作品です。
 紀元前4世紀に書かれ、プラトンの対話篇の最高傑作と言われています。

 大学時代に、西洋思想史の授業において、岩波文庫で読んだ記憶があります。
 2013年に出た古典新訳文庫版の方が、とても分かりやすいのでオススメです。


饗宴 (光文社古典新訳文庫)

饗宴 (光文社古典新訳文庫)

  • 作者: プラトン
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2013/09/10
  • メディア: 文庫



饗宴 (岩波文庫)

饗宴 (岩波文庫)

  • 作者: プラトン
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2008/12
  • メディア: 文庫



 悲劇詩人アガトンの優勝を祝う饗宴で、愛の神エロスの讃美が始まりました。
 そして皆、男同士の愛(少年愛)を最も純粋で美しいものとして讃えます。

 それもそのはず。ここに集う男たちの多くは、恋人同士なのです。
 アガトンはパウサニアスと、パイドロスはエリュクシマコスと恋人同士です。

 最後にいよいよソクラテスが、エロスとは何かを語り出します。
 ディオティマという女に聞いたこととして、エロスの本質に迫ります。

 「正しい手順と方法で美しいものを観察していくことにより、ついにエロス
 の道の終着点に到達する。その者は突如、ある驚くべき本性を持った美を目
 の当たりにするのだ。」(P150)

 ソクラテスによって締めくくられたと思ったら、アルキビアデスが登場します。
 もちろん、シケリア遠征の主導者で、ソクラテスの恋人であった、あの男です。

 作品全体が興味深いのですが、アルキビアデスが出てくるだけで、私は嬉しい。
 この翌年、彼はシケリア遠征を主導しながら、スパルタに寝返ってしまいます。

 この場面は、アルキビアデスが民衆の顰蹙を買う直前の姿が描かれているのです。
 彼は、戦時中にソクラテスに命を救われたことなど、貴重な証言をしています。

 さて、この本は本文が193ページまでで、そのあと100ぺージ近い解説が続きます。
 これを親切だと考えるか、おせっかいだと考えるかは、とても微妙なところです。

 確かに、丁寧ですばらしい解説ですが、これを全部読む人は少ないでしょう。
 分かりやすい訳文と適切な註を作った時点で、この本は立派に完成しています。

 解説を20ページくらいに圧縮して、700円くらいで出せなかっただろうか?
 この薄さで、税込み1000円オーバーとは・・・またセコイ話で申し訳ない。

 ついでながら、プラトンの対話篇「ラケス」についても紹介しておきたいです。
 ここでは、アルキビアデスの好敵手ニキアスが、ラケスとともに登場します。


ラケス (講談社学術文庫)

ラケス (講談社学術文庫)

  • 作者: プラトン
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1997/04/10
  • メディア: 文庫



 この対話は、ソクラテスが尋ねてニキアスとラケスが答える、必殺のパターン。
 しかし最後は、分かった様な分からない様な感じで、結論が出ずに終わります。

 対話の内容もそれなりに興味深いのですが、ニキアスが出ているだけで嬉しい。
 この数年後、ニキアス率いるアテナイ軍は、シケリアで壊滅してしまいます。

 これ以前ニキアスは、好戦派を退けて、「ニキアスの和平」を成立させました。
 シケリア遠征を訴えるアルキビアデスに、その無謀さを冷静に説きました。

 しかし、不本意ながらシケリア遠征が決まり、その将軍に選ばれてしまいます。
 しかも、途中でスパルタに亡命したアルキビアデスによって、妨害されて・・・

 ニキアスにとって、アルキビアデスは疫病神でした。
 ニキアスが死んだのが前413年。アルキビアデスより9年早い死でした。

 アルキビアデスとニキアスについては、トゥキュディデスの「歴史」参照。
 → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2016-08-04

 さいごに。(松本城)

 家族旅行3日目は、松本城に行きました。平日なのに混んでいました。
 天守閣の最上段からは、北アルプスの稜線を見ることができました。

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