「もつれっぱなし」 井上夢人 (講談社文庫)
男女の会話だけで成り立っていて、どんどんもつれていく短編ばかりです
井上夢人は、1982年から活躍している推理・SF・ホラー作家です。
「宇宙人の証明」「四十四年後の証明」「呪いの証明」「狼男の証明」「幽霊の証明」
「嘘の証明」の、全6編が収録されています。マイ・ベストは「宇宙人の証明」です。
「・・・あたしね」「うん」「宇宙人、見つけたの」「・・・」
彼女が拾って、小鉢に入れておいた宇宙人とは・・・(「宇宙人の証明」)
「あたし、お祖父ちゃんの孫なの」悪戯かと思ったら・・・(「四十四年後の証明」)
「あたしね・・・ここにいないの」幽霊になったという彼女・・・(「幽霊の証明」)
なにげなく始まった会話が、もつれにもつれて、意外な方向へ進んでいきます。
笑える話、切ない話、ゾッとする話、いろいろあって、とても楽しく読めました。
タイトルは、「もつれている話」と「もつれてばかりいる」との意味を掛けています。
そのもつれ方が実に面白かったです。作者のセンスを感じる1冊です。
さて、男女の会話が中心となる作品で、印象的なものが、ほかに2作あります。
鎌田敏夫「恋愛映画」と、丸谷才一「女性対男性」。どちらも絶版です。残念!
「恋愛映画」は、恋愛映画を見た二人の男女の、会話だけでできている短編集です。
「旅愁」「恋に落ちて」「昼下がりの情事」「マンハッタン」など、全10編です。
マイ・ベストは冒頭の「プリティ・ウーマン」です。
映画「プリティ・ウーマン」は、私がとても好きな恋愛映画です。
どの作品も会話だけで成り立っているので、その会話自体が恋愛映画のようです。
そして、恋愛映画のようにオシャレです。作者のセンスが光ります。
鎌田敏夫といえば、私にとっては、「金曜日の妻たちへ」の脚本家です。
30年以上前、私の高校時代、このドラマは不倫ブーム(!)を巻き起こしました。
明石家さんま主演「男女7人夏物語」や、山口智子主演「29歳のクリスマス」も、
大ヒットしました。今振り返ると、良くも悪くもバブル期のドラマですね。
丸谷才一「女性対男性」も、会話が中心の短編集(エッセイ集?)です。
副題は「会話のおしゃれ読本」。オシャレな会話であふれています。
全50編です。1章が6ページほどですが、中身がギュッと詰まっています。
センスより知性を重視した会話ばかりで、話者の教養の高さを感じます。
また、言葉遣いがとても丁寧で正確で、品のある文章です。さすが丸谷才一。
「パーティーの話からパンティの話になりました」という話さえ、品があります。
さいごに。(「逃げ恥」)
「戦争と平和」ロスから、最近ようやく立ち直りました。
ところで、民放ドラマをよく見ている娘は、「逃げ恥」がイチオシだと言います。
そこで、娘と一緒に見てみたら、これが実にほんわかしていて、良い感じでした。
新垣結衣と星野源の組み合わせが絶妙です。二人とも、良い味を出しています。