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年代記(タキトゥス)

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 「年代記(上)ティベリウス帝からネロ帝へ」 タキトゥス  (岩波文庫)


 初代ローマ皇帝アウグストゥスの死から、五代皇帝ネロまでの年代記です。
 タキトゥスは、紀元1世紀から2世紀にかけて活躍した歴史家です。

 岩波文庫から二分冊で出ています。古い訳ですが、分かりやすかったです。
 原典には欠落している部分があり、いいところで話が途切れたりもします。


年代記〈上〉ティベリウス帝からネロ帝へ (岩波文庫)

年代記〈上〉ティベリウス帝からネロ帝へ (岩波文庫)

  • 作者: タキトゥス
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1981/03/16
  • メディア: 文庫



 「年代記(上)」は、二代皇帝ティベリウスの治世を描いています。
 ティベリウス帝の陰険さを反映してか、その時代は全体的に陰鬱です。

 「むごたらしい命令、のべつ幕なしの弾劾、いつわれる友情、清廉な人の破滅、
 必ず断罪で終る裁判、そういうものにがんじ搦めに縛られ、千篇一律の事件を
 見せつけられ、倦怠を覚える。」(P273)と、タキトゥスはぼやいています。

 タキトゥスの筆致は辛辣です。彼は帝政をよく思っていなかったらしいです。
 そして、共和制を懐かしむような気持ちが、随所に表れています。

 たとえば、カエサル暗殺事件を、「奴隷根性のまだ熟していなかったローマが、
 自由をとりもどそうとして失敗したあの日」(P23)と表現しています。

 さて、ティベリウス帝は、初代皇帝アウグストゥスの継子(ままこ)でした。
 アウグストゥスがリウィアと強引に結婚した時、すでにお腹の中にいたのです。

 だからアウグストゥスにとって本命は、血のつながりのあるゲルマニクスです。
 ティベリウスは中継ぎ。そういう出生の因縁が、彼を陰険にしたのかもしれない。

 しかし一方で、ティベリウスは賢帝だったという説もあります。
 実際彼は、カプリ島から離れることなく、命令一つでセイヤヌスを倒しました。
 (しかしその部分の原典が欠落しています。読みたかった!)

 さて、ティベリウスの治世の前半では、ゲルマニクスの活躍が印象的でした。
 ゲルマニアでアルミニウスと戦い、栄光に包まれながらも、最後は・・・

 後半は、護衛隊長セイヤヌスの野望とその破滅が、印象的でした。
 ティベリウスの信頼を得ながら、その陰でとてつもない計略を進めて・・・

 平和ゆえに腐敗していたティベリウス治世について、色々と分かりました。
 ティベリウスといえば青の洞窟。それしか知らなかった自分が恥ずかしい。

 「年代記」の下巻は、「第二部 クラウディウスとネロ」です。
 三代皇帝カリグラの巻が、欠落しているのが残念です。

 さいごに。(持久走大会)

 娘の持久走大会がありました。今年は仕事の関係で、応援に行けませんでした。
 順位は昨年の7位からだいぶ落ちて22位。

 それでも一生懸命に走って、ラストスパートをしてゴールしたと言います。
 なによりも、最後までがんばってくれたことがうれしいです。

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