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ユーディット

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 「ユーディット」 ヘッベル作 吹田順助訳 (岩波文庫)


 町を救うため、策略によって敵将を殺害した、美女ユーディットの悲劇です。
 ヘッベルの処女作で、上演された当時、センセーションを起こしたそうです。

 今年2013年2月に、岩波文庫から復刊されたばかりです。
 初版は1951年。60年以上経つのに、まだ4刷です。


ユーディット―他一篇 (岩波文庫)

ユーディット―他一篇 (岩波文庫)

  • 作者: ヘッベル
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1951/10/05
  • メディア: 文庫



 かつてユーディットの夫だった男は、何かに恐れて、彼女に触れませんでした。
 その理由を明かすことなく、夫は病気で死んでしまいました。

 のちに、アッシリアの司令官ホロフェルネスが、ベトゥーリヤ市を囲みました。
 水道を断ち切られたため、市民は飢えと渇きに苦しみ、降伏を望む声も出ます。

 絶体絶命の中で、ユーディットは啓示を受けました。そして、理解したのです。
 なぜ自分が美しく生れてきたのか、なぜ結婚しながら乙女でいられたのか、
 そして、自分の使命が何なのかを。

 敵将を恐れる男たちを尻目に、ユーディットはホロフェルネスのもとへ赴きます。
 ある策略を抱き、神の声を信じて…

 ヘッベルは、ワーグナーとほぼ同時期に活躍した、当時最大の劇作家です。
 この作品は、旧約聖書外典「ユディト記」に、彼らしい味付けが成されています。

 ここでは、ホロフェルネスが、魅力ある男として描かれています。
 彼は、獅子に育てられた男、世界を動かす男、自分より強い男の出現を待つ男です。

 ユーディットは、敵将ホロフェルネスを憎みながらも、男として認めてしまいました。
 ここに、悲劇があります。

 ユーディットが、敵将のクビを取るのは、同胞を救うためだけではありません。
 女性特有の説明しがたい思いが、そこに入り込んでいます。

 それゆえ、ここに描かれるユーディットは、官能的な要素を持っています。
 世紀末画家クリムトの描いた「ユディット」が、イメージとぴったりです。

ユディット.jpg

 魅力を感じた相手を殺す。このテーマは、「ペンテジレーア」と共通します。
 どちらも強烈な印象を残します。
 「ペンテジレーア」クライスト → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2013-02-08

 さいごに。(りかちゃん人形)

 うちには、りかちゃん人形が3体あります。
 それでも、娘が友達とりかちゃんごっこをする時、取り合いになります。

 というのも、3体の髪の色と長さが、微妙に違っているからです。
 また娘に言わせると、表情もかすかに違っているようなのです。
 私には、同じ人形にしか見えませんが。

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