「ユーディット」 ヘッベル作 吹田順助訳 (岩波文庫)
町を救うため、策略によって敵将を殺害した、美女ユーディットの悲劇です。
ヘッベルの処女作で、上演された当時、センセーションを起こしたそうです。
今年2013年2月に、岩波文庫から復刊されたばかりです。
初版は1951年。60年以上経つのに、まだ4刷です。
かつてユーディットの夫だった男は、何かに恐れて、彼女に触れませんでした。
その理由を明かすことなく、夫は病気で死んでしまいました。
のちに、アッシリアの司令官ホロフェルネスが、ベトゥーリヤ市を囲みました。
水道を断ち切られたため、市民は飢えと渇きに苦しみ、降伏を望む声も出ます。
絶体絶命の中で、ユーディットは啓示を受けました。そして、理解したのです。
なぜ自分が美しく生れてきたのか、なぜ結婚しながら乙女でいられたのか、
そして、自分の使命が何なのかを。
敵将を恐れる男たちを尻目に、ユーディットはホロフェルネスのもとへ赴きます。
ある策略を抱き、神の声を信じて…
ヘッベルは、ワーグナーとほぼ同時期に活躍した、当時最大の劇作家です。
この作品は、旧約聖書外典「ユディト記」に、彼らしい味付けが成されています。
ここでは、ホロフェルネスが、魅力ある男として描かれています。
彼は、獅子に育てられた男、世界を動かす男、自分より強い男の出現を待つ男です。
ユーディットは、敵将ホロフェルネスを憎みながらも、男として認めてしまいました。
ここに、悲劇があります。
ユーディットが、敵将のクビを取るのは、同胞を救うためだけではありません。
女性特有の説明しがたい思いが、そこに入り込んでいます。
それゆえ、ここに描かれるユーディットは、官能的な要素を持っています。
世紀末画家クリムトの描いた「ユディット」が、イメージとぴったりです。

魅力を感じた相手を殺す。このテーマは、「ペンテジレーア」と共通します。
どちらも強烈な印象を残します。
「ペンテジレーア」クライスト → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2013-02-08
さいごに。(りかちゃん人形)
うちには、りかちゃん人形が3体あります。
それでも、娘が友達とりかちゃんごっこをする時、取り合いになります。
というのも、3体の髪の色と長さが、微妙に違っているからです。
また娘に言わせると、表情もかすかに違っているようなのです。
私には、同じ人形にしか見えませんが。