「風流仏・一口剣」 幸田露伴 (岩波文庫)
「風流仏」は、修行中の若い仏師が、悲恋の末に風流仏を彫るまでの物語です。
擬古典調の文体で書かれた名作で、幸田露伴の出世作として知られています。
2013年の2月に、岩波文庫から復刊されましたが、またいつ消えてしまうやら。
漢字は旧字体で、一文が長く、会話文にカッコが無くて、とても読みにくいです。
仏像彫刻一筋で、諸国を修行して歩く若い仏師「珠運」が、須原に一泊しました。
その宿で、名物の花漬けを売りに来たのが、可憐な「お辰」でした。
宿の主人から、彼女の悲しい身の上を聞き、「お辰」を忘れられなくなりました。
そして、とうとう「珠運」は行動に出ますが…
60ページほどの短い作品ながら、とても密度が濃い物語でした。
読み終わったあとも、露伴の語り口調が、いつまでも耳に残ります。
ところで、この作品の冒頭は、こんな調子です。
「三尊四天王十二童子十六羅漢さては五百羅漢までを」
目が回りそうです。
そこで、「五重塔」の時と同じく、朗読CDを探しました。が、ありません。
「五重塔」 → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2013-01-04
しかし、朗読カセットがあったので、市の図書館から借りてきました。
現在乗っている車には、カセットデッキがあるので、通勤の車中で聴きました。
しかし、しかし、最初は何を言っているのか分からず、頭がくらくらしました。
たびたび出てくる「シュウン」という言葉は何か? どんな意味か?
2回目の朗読で、それが主人公「珠運」だと分かり、ようやく話がつかめました。
ちなみに、朗読は133分! 2回で、4時間半近くになります。
それにしても、仏像好きには、たまらない物語です。
特に、最後の十章の下は圧巻。朗読にも力が入っています。
同時収録の「一口剣」も、露伴得意の職人モノ。ラストが、すごい。
また、庄屋殿の「実は其の…」という口ぐせが、笑えました。
さいごに。(「仏像拝観手引」)
NHKの番組「仏像拝観手引」(火曜夜・Eテレ)を、毎回楽しみにしています。
今回の「日本列島巡礼編」では、マイナーな仏像も紹介されていて嬉しいです。
もう10年以上、仏像巡りをしていません。
いつの日か家族3人で、仏像巡りができるといいのだけど。