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黄金の驢馬

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 「黄金の驢馬」 アープレーイユス作 呉茂一・国原吉之助訳 (岩波文庫)


 魔術によって驢馬に変身した青年ルキウスの、様々な冒険の物語です。
 古代ローマの文学で、唯一完全な形で残っている作品です。

 岩波文庫から2013年に出ています。
 その割に訳が古い感じだなあと思っていたら、初訳は1956年でした。


黄金の驢馬 (岩波文庫)

黄金の驢馬 (岩波文庫)

  • 作者: アープレーイユス
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2013/07/18
  • メディア: 文庫



 テッサリアで、ある男の屋敷に泊まることになった青年ルキウス。
 実は、その男の妻は魔法使いで、ふくろうに化けて空を飛び回ります。

 ルキウスは、その家の侍女となじみになり、自分も変身を企てます。
 しかし、ふくろうになるつもりが、驢馬(ロバ)になってしまいました。

 折悪しく、そこへ押し入り強盗がやってきました。
 ロバのルキウスは連れて行かれて、彼の長い冒険が始まります・・・

 古代ローマを舞台にしたこの小説、2世紀にできたというから驚きます。
 古代ローマ人を目の前に見るようで、彼らの生活を身近に感じます。

 内容は、「サテュリコン」同様、退廃的な部分が多いです。
 例えばロバのルキウスは、人の女房の浮気現場を、何度も目撃します。

 そのきわめつけが、終盤(巻の10)に出てくる或る貴婦人の浮気。
 彼女が愛したのは、なんとロバのルキウスで・・・

 さて、この物語は、様々な挿話が収録されています。
 中でも、「クピードーとプシューケー」の挿話は有名らしい。

 しかし、私が最も面白かった挿話は、「巻の2」にある死人の番人の話。
 男は、死人が魔女に食われないよう、金貨5枚で夜の番をしますが・・・
 この部分だけ、ちょっとした怪奇小説になっています。

 ところで、作者アープレーイユスは、資産家の未亡人と結婚しました。
 そのため、魔術を使って相手を手に入れたと、告訴されたそうです。
 作者は雄弁だったため、きちんと自己弁護して無罪になりましたが。

 さいごに。(ロンドンバス)

 娘がずっと乗りたがっていたロンドンバスに、先日乗ることができました。
 動物園から駅へ向かうシャトルバスの、最終便として使われていたので。

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