「黄金の驢馬」 アープレーイユス作 呉茂一・国原吉之助訳 (岩波文庫)
魔術によって驢馬に変身した青年ルキウスの、様々な冒険の物語です。
古代ローマの文学で、唯一完全な形で残っている作品です。
岩波文庫から2013年に出ています。
その割に訳が古い感じだなあと思っていたら、初訳は1956年でした。
テッサリアで、ある男の屋敷に泊まることになった青年ルキウス。
実は、その男の妻は魔法使いで、ふくろうに化けて空を飛び回ります。
ルキウスは、その家の侍女となじみになり、自分も変身を企てます。
しかし、ふくろうになるつもりが、驢馬(ロバ)になってしまいました。
折悪しく、そこへ押し入り強盗がやってきました。
ロバのルキウスは連れて行かれて、彼の長い冒険が始まります・・・
古代ローマを舞台にしたこの小説、2世紀にできたというから驚きます。
古代ローマ人を目の前に見るようで、彼らの生活を身近に感じます。
内容は、「サテュリコン」同様、退廃的な部分が多いです。
例えばロバのルキウスは、人の女房の浮気現場を、何度も目撃します。
そのきわめつけが、終盤(巻の10)に出てくる或る貴婦人の浮気。
彼女が愛したのは、なんとロバのルキウスで・・・
さて、この物語は、様々な挿話が収録されています。
中でも、「クピードーとプシューケー」の挿話は有名らしい。
しかし、私が最も面白かった挿話は、「巻の2」にある死人の番人の話。
男は、死人が魔女に食われないよう、金貨5枚で夜の番をしますが・・・
この部分だけ、ちょっとした怪奇小説になっています。
ところで、作者アープレーイユスは、資産家の未亡人と結婚しました。
そのため、魔術を使って相手を手に入れたと、告訴されたそうです。
作者は雄弁だったため、きちんと自己弁護して無罪になりましたが。
さいごに。(ロンドンバス)
娘がずっと乗りたがっていたロンドンバスに、先日乗ることができました。
動物園から駅へ向かうシャトルバスの、最終便として使われていたので。
