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ヴェニスに死す

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 「ヴェニスに死す」 トーマス・マン作 高橋義孝訳 (新潮文庫)


 ヴェニスに旅した老作家が、そこで出会った美少年に心を奪われる物語です。
 マンがヴェニスに旅行したときの、実体験をもとにした中編小説です。

 現在、新潮文庫、古典新訳文庫、岩浪文庫、集英社文庫などから出ています。
 最も新しい訳は、もちろん古典新訳文庫版。読みやすいです。


ヴェネツィアに死す (光文社古典新訳文庫)

ヴェネツィアに死す (光文社古典新訳文庫)

  • 作者: トーマス マン
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2007/03
  • メディア: 文庫



 しかし、私が読んだのは、新潮文庫版。「魔の山」と同じ高橋訳です。
 カバーの病的な美しさは、「ヴェニスに死す」のイメージにぴったり。


トニオ・クレーゲル ヴェニスに死す (新潮文庫)

トニオ・クレーゲル ヴェニスに死す (新潮文庫)

  • 作者: トーマス マン
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1967/09/27
  • メディア: 文庫



 50代の著名な作家アシェンバハは、旅先のヴェニスで美しい少年に出会いました。
 少年はまだ10代前半。家族から、タージオと呼ばれていました。

 やがてヴェニスに、異変が訪れて・・・
 しかし、少年を愛し始めたアシェンバハは、ヴェニスを離れずに・・・

 テーマは少年愛。しかも主人公は50代の男。当時は話題になったようです。
 1971年に映画化されて、カンヌ映画祭で25周年記念賞を受賞したのだそうです。

 さて、マンは30代のときヴェニスを訪れ、11歳の美少年に夢中になりました。
 帰国してから、その体験をいっきに書き上げたのが、この作品です。

 アシェンバハが、少年を付け回す場面は、切なくて、アホらしくて、見苦しい。
 同じことを、作者マンがおこなっていたとは、思いたくないです。

 面白いことに、この少年のモデルが分かっています。
 ポーランドのある男爵です。  

 彼は、公開された映画を見て、自分がモデルになっていることに気付いたそうです。
 そのとき彼は、すでに70代。そして、作者のマンは、死んでいました。

 余談ですが、この作品でマンは、ゴンドラをについて次のように述べています。
 ヴェニスに行って、ゴンドラに乗ってみたくなります。

 「古い物語的な時代から引続きそのままの形で伝わっていて、この世の中にあるものの
 中では棺だけがそれに似ている、この異様に黒い不可思議な乗物ーーゴンドラは小波の
 音しか聞こえぬ夜の、静けさの中に行われた犯罪的な冒険を想い起させる。」(P152)

 さいごに。(どんくさいところがまた・・・)

 娘が、学校の支度をするのがのんびりで、とてもどんくさいです。
 妻はよくイライラしています。

 私もどんくさかったので、娘のどんくささが、かえってかわいく思えるのです。
 で、この温度差が、また夫婦間のトラブルのもとに・・・

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