「飛ぶ教室」 ケストナー作 丘沢静也訳 (光文社古典新訳文庫)
ギムナジウムの寄宿舎を舞台に、少年たちと人びととの交流を描いた小説です。
世界中で愛されている、児童文学の傑作です。
古典新訳文庫と講談社文庫から出ています。どちらもオススメです。
私が読んだ古典新訳文庫版は、とても明快な訳でした。(でも、カバーが・・・)
ファンタジーではありません。ギムナジウムを舞台にした物語です。
私は、「空飛ぶじゅうたん」のような物語だとばかり思っていました。
成績1番のマルティン、ボクサー志望のマティアス、臆病なウーリ、
読書家のセバスティアン、両親から捨てられたジョニー。
物語の中心は、これら5人の少年たちです。
ギムナジウムの5年生。年は、10代の半ばでしょうか。
しかし、大人こそ、この物語を読むべきです。
自分が忘れていた大切な何かを、思い出すことでしょう。
少年たちを取り巻く大人たちが、とても良い味を出しています。
特に、正義さんと禁煙さん。禁煙さんの次の言葉は印象的でした。
「ただね、大切なことに思いをはせる時間をもった人間が、
もっとふえればいいと思うだけだ。」(P160)
解説によると、ケストナーは、「すなおな感情、はっきりした思考、
かんたんな言葉」に、こだわったのだそうです。
実際、とても分かりやすいです。だから、注釈がひとつもありません。
ただ、私は「ディクテーション・ノート」(P43)の意味が分からなかった。
人の名前かと思っていました。(ああ、恥ずかし)
さて、訳者解説は、わずか7ページ足らずですが、秀逸です。
ケストナーに対する愛を感じます。
解説が短く、注釈は無し。値段は500円を切っています。
実に理想的な文庫本です。本を作る人みんなに、見習ってほしいです。
さいごに。(なぜ私だけうつらなかったのか)
妻と娘が寝込んでいたので、洗濯・食事の用意・食器洗いなどをやりました。
この間、インフルのふたりと顔を突き合わせていたのに、私だけ元気でした。
私の仕事場で、感染した人は、まだひとりもいません。
多くの人と接する仕事をしているので、自然に免疫ができたのでしょうか。