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仕事と日

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 「仕事と日」 ヘシオドス作 松平千秋訳 (岩波文庫)


 怠惰で不実な弟に対して、勤労の大切さを教え、人生訓を述べた叙事詩です。
 「神統記」と並ぶ、作者の代表作で、世界最初の農事暦が含まれています。

 岩波文庫から出ています。「神統記」同様、丁寧に作られています。
 「ホメーロスとヘーシオドスの歌競べ」が併録されていて、嬉しいです。


ヘーシオドス 仕事と日 (岩波文庫)

ヘーシオドス 仕事と日 (岩波文庫)

  • 作者: ヘーシオドス
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1986/05/16
  • メディア: 文庫



 作者の弟ペルセースは怠け者で、賄賂を使って兄の遺産を横取りしました。
 ヘシオドスはペルセースに、真面目に働くことの大切さを教えますが・・・

 「労働は決して恥ではない、働かぬことこそ恥なのだ。」
 「不正な利得をあげてはならぬ、不正な利得は災厄(損)に等しい。」

 このような訴えが、ダメな弟に響いたでしょうか?
 一方、遺産を失ったヘシオドスは旅に出て、のちに詩人として大成しました。

 ほかにも、「女を信用するような男は、詐欺師をも信用する。」(!)とか、
 「陽に向かい、立ったままで放尿してはならぬ。」とか、ヘンな訓戒もある。

 「相手が先に、気に障ることをいい、あるいはする場合には、きっと覚えて
 おいて、二倍にして返してやれ。」(倍返し?)というのもあって笑えました。

 内容は、兄から弟へのお説教を基本としていますが、意外と面白かったです。
 ただし、流れがつかみにくいので、先に解説を読んだ方がいいです。

 「仕事と日」には、ヘシオドスの 自伝的な部分も含まれています。
 例えば、歌競べで勝ち、三脚釜を手に入れて、ヘリコン山に奉納したとか。

 歌競べの模様は、「ホメーロスとヘーシオドスの歌競べ」に描かれています。
 著者は未詳で、内容の信憑性が疑われますが、実に興味深い短編です。

 特に、結末のパネーデース王の判定は、とてもとても不自然です。
 最初から最後までホメロスが優位なのに、どうしてヘロドトスが勝つのか。

 しかし、これはまさに、そのドンデン返しを楽しむべきなのでしょう。
 結末を知りつつも、ホメロス有利の展開に、首を傾げながら読む面白さ!

 気の利いた言葉は、たいていホメロスが言っています。
 「死すべき人間には何がもっとも良いことか。」の 問いに、彼の答えは・・・

 さて、「仕事と日」を読んでいて、内田樹の「下流志向」を思い出しました。
 この本の後半では、「労働からの逃走」が取り上げていたので。


下流志向〈学ばない子どもたち 働かない若者たち〉 (講談社文庫)

下流志向〈学ばない子どもたち 働かない若者たち〉 (講談社文庫)

  • 作者: 内田 樹
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/07/15
  • メディア: 文庫



 さいごに。(歓迎!ディズニーランド値上げ)

 6400円でも高いと思っていました。昨年6900円になり、今度7400円になります。
 「本当に来たい人だけおいで」という、メッセージなのでしょうか。

 おかげさまで、妻から「次もパパは行かなくていいよ」と言ってもらえました。
 これは、毎度いやいや付き合わされているお父さんを、解放する契機となるかも。

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