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八日目の蝉

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 「八日目の蝉」 角田光代 (中公文庫)


 不倫相手の子を盗んだ女と、その女に育てられた子の、葛藤を描いた物語です。
 読売新聞に連載された時から好評で、映画化された作品も評価が高かったです。

 2011年に中公文庫から出ています。新聞連載されたのは2005年です。
 希和子を中心とした1章と、恵理菜を中心とした2章で構成されています。


八日目の蝉 (中公文庫)

八日目の蝉 (中公文庫)

  • 作者: 角田 光代
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2011/01/22
  • メディア: 文庫



 野々宮希和子は、不倫相手の赤ん坊を一目見るために、その自宅に忍び込みました。
 しかし、その笑顔を見ると、衝動的にその子を抱いて走り出してしまったのです。

 こうして、希和子と赤ん坊「薫」の逃走劇は始まりました。
 友人宅、名古屋の老女宅、山奥の集団生活、そして小豆島へ・・・

 秋山恵理菜は、誘拐事件の報道があとを引いて、世間になじめなくなっていました。
 大学生になった恵理菜のもとに、かつて一緒に暮らしていた安藤千草が現れました。

 こうして、恵理菜は過去の誘拐事件と向き合い始めました。
 二人は、いっしょに取材旅行に出かけて・・・

 さて、2月26日の金曜ロードショーでやったので、映画版を先に見ました。
 とても感動しました。さすが、日本アカデミー賞10冠です。

 たいていの場合は、映画は原作に及ばないものです。
 しかし映画「八日目の蝉」は、原作を充分魅力的に表現していると思いました。

 映画では恵理菜の視点で、過去の回想と現在の物語が、交互に表現されています。
 しかも、無駄をザクッと省いて、作品のエッセンスをギュッと凝縮しています。

 特に、希和子と薫が写真を撮る場面、それに続くラストの場面は泣けました。
 そして、誘拐犯である希和子に、ついつい同情してし まいました。

 それに、映像がとても美しかったです。小豆島の祭りのシーンがきれいでした。
 また、配役も良かった。個人的には、千草役の小池栄子が印象に残りました。

 と、なんだか映画の感想になってしまいましたが、もちろん原作も良いです。
 映画には無いシーンが読めて、映画では分からなかった背景が分かります。

 1章は、サスペンスっぽく進むので、ハラハラしながら読みました。
 2章は、謎解きっぽく進むので、納得しながら読めました。

 そして、なんといっても原作では、ラストシーンがとてもすばらしい。
 映画しか見ていなかったら、ぜひ原作も読んでラストに感動してほしいです。

 さて、角田光代の長編小説では、もうひとつ「対岸の彼女」が有名です。
 しかし、妻いわく、「男にこの世界が分かるかしら?」


対岸の彼女 (文春文庫)

対岸の彼女 (文春文庫)

  • 作者: 角田 光代
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2007/10/10
  • メディア: 文庫



 さいごに。(みんな同じ顔に見える)

 たとえばAKBの顔が、みんな同じに見える。
 それで、うちの妻に、「おじさんだなあ」と言われました。

 しかし、このあいだ月九のドラマを見ていた妻は、
 「出てくる男の子が、みんな同じ顔に見える」と言っていました。

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