「八日目の蝉」 角田光代 (中公文庫)
不倫相手の子を盗んだ女と、その女に育てられた子の、葛藤を描いた物語です。
読売新聞に連載された時から好評で、映画化された作品も評価が高かったです。
2011年に中公文庫から出ています。新聞連載されたのは2005年です。
希和子を中心とした1章と、恵理菜を中心とした2章で構成されています。
野々宮希和子は、不倫相手の赤ん坊を一目見るために、その自宅に忍び込みました。
しかし、その笑顔を見ると、衝動的にその子を抱いて走り出してしまったのです。
こうして、希和子と赤ん坊「薫」の逃走劇は始まりました。
友人宅、名古屋の老女宅、山奥の集団生活、そして小豆島へ・・・
秋山恵理菜は、誘拐事件の報道があとを引いて、世間になじめなくなっていました。
大学生になった恵理菜のもとに、かつて一緒に暮らしていた安藤千草が現れました。
こうして、恵理菜は過去の誘拐事件と向き合い始めました。
二人は、いっしょに取材旅行に出かけて・・・
さて、2月26日の金曜ロードショーでやったので、映画版を先に見ました。
とても感動しました。さすが、日本アカデミー賞10冠です。
たいていの場合は、映画は原作に及ばないものです。
しかし映画「八日目の蝉」は、原作を充分魅力的に表現していると思いました。
映画では恵理菜の視点で、過去の回想と現在の物語が、交互に表現されています。
しかも、無駄をザクッと省いて、作品のエッセンスをギュッと凝縮しています。
特に、希和子と薫が写真を撮る場面、それに続くラストの場面は泣けました。
そして、誘拐犯である希和子に、ついつい同情してし まいました。
それに、映像がとても美しかったです。小豆島の祭りのシーンがきれいでした。
また、配役も良かった。個人的には、千草役の小池栄子が印象に残りました。
と、なんだか映画の感想になってしまいましたが、もちろん原作も良いです。
映画には無いシーンが読めて、映画では分からなかった背景が分かります。
1章は、サスペンスっぽく進むので、ハラハラしながら読みました。
2章は、謎解きっぽく進むので、納得しながら読めました。
そして、なんといっても原作では、ラストシーンがとてもすばらしい。
映画しか見ていなかったら、ぜひ原作も読んでラストに感動してほしいです。
さて、角田光代の長編小説では、もうひとつ「対岸の彼女」が有名です。
しかし、妻いわく、「男にこの世界が分かるかしら?」
さいごに。(みんな同じ顔に見える)
たとえばAKBの顔が、みんな同じに見える。
それで、うちの妻に、「おじさんだなあ」と言われました。
しかし、このあいだ月九のドラマを見ていた妻は、
「出てくる男の子が、みんな同じ顔に見える」と言っていました。