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さがしもの

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 「さがしもの」 角田光代 (新潮文庫)


 名作「さがしもの」など、本にまつわる作品全9編を収録した短編集です。
 作者が脂の乗り切った時期に書いた作品で、本好きにはたまらない本です。

 新潮文庫から出ています。2015年の新潮文庫の100冊に入っていました。
 「この本が、世界に存在することに」が、改題されて文庫になりました。


さがしもの (新潮文庫)

さがしもの (新潮文庫)

  • 作者: 角田 光代
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2008/10/28
  • メディア: 文庫



 死を間近にした祖母に、ある本をさがしてほしいと頼まれました。
 羊子はいくつもの書店を巡りましたが、その本を見つけることができません。 

 「もしあんたが見つけだすより先にあたしが死んだら、化けて出てやるからね」
 しかし本は見つからず、翌年祖母は亡くなり・・・

 なぜ祖母は、その本にそれほどこだわったのか?
 ・・・タイトル作「さがしもの」は、角田の短編の傑作だと思います。

 冒頭の「旅する本」も、私の大好きな物語です。
 ある本を古本屋で売って、数年後にネパールに来てみると・・・

 ありえない話ですが、これこそ、ザ・角田ワールド。
 私も、こんな本に出会ってみたいです。

 以前、角田自身による「旅する本」の朗読CDを、聞いたことがあります。
 あれは、とても良かった。癒されるような声で、飾らない読み方でした。

 確か、雑誌「ダ・ヴィンチ」の付録に付いていたような気がします。
 先ほど探したのですが、見当たりません。もったいない!

 そのほか、「不幸の種」「引き出しの奥」も印象的でした。
 どちらも、古本伝説という感じで、少しホラーっぽくて面白かったです。

 作中、こんな言葉が出てきました。本の魅力をズバリ表現した言葉です。
 「開くだけでどこへでも連れてってくれるものなんか、本しかないだろう」

 さいごに、作者による「あとがきエッセイ」があるのもうれしいです。
 「本は人を呼ぶのだ。」・・・まさに、そのとおり!

 この短編集は、収録されている全9編が本にまつわる物語です。
 本好きには絶対オススメです。特に、若い人たちに勧めたい。

 さて、角田光代は、私の中では、鷺沢萠とセットです。私と同じ世代なので。
 学年でいうと、角田が私の一つ上で、鷺沢が一つ下になります。

 2人とも、1987年に注目を集め、作家としての活動を始めました。
 しかし、このあとが対照的です。

 鷺沢は、最初からフルスピードで飛ばして、2004年に突然亡くなりました。
 角田は、2004年前後からやっとブレイクし、次々と代表作を出しています。

 さいごに。(転勤なし?)

 今の職場はちょうど10年。そろそろ新しい職場に行っても良い時期です。
 しかし今年も転勤なし。希望を聞かれた時、贅沢な希望を言ったためか。

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