「さがしもの」 角田光代 (新潮文庫)
名作「さがしもの」など、本にまつわる作品全9編を収録した短編集です。
作者が脂の乗り切った時期に書いた作品で、本好きにはたまらない本です。
新潮文庫から出ています。2015年の新潮文庫の100冊に入っていました。
「この本が、世界に存在することに」が、改題されて文庫になりました。
死を間近にした祖母に、ある本をさがしてほしいと頼まれました。
羊子はいくつもの書店を巡りましたが、その本を見つけることができません。
「もしあんたが見つけだすより先にあたしが死んだら、化けて出てやるからね」
しかし本は見つからず、翌年祖母は亡くなり・・・
なぜ祖母は、その本にそれほどこだわったのか?
・・・タイトル作「さがしもの」は、角田の短編の傑作だと思います。
冒頭の「旅する本」も、私の大好きな物語です。
ある本を古本屋で売って、数年後にネパールに来てみると・・・
ありえない話ですが、これこそ、ザ・角田ワールド。
私も、こんな本に出会ってみたいです。
以前、角田自身による「旅する本」の朗読CDを、聞いたことがあります。
あれは、とても良かった。癒されるような声で、飾らない読み方でした。
確か、雑誌「ダ・ヴィンチ」の付録に付いていたような気がします。
先ほど探したのですが、見当たりません。もったいない!
そのほか、「不幸の種」「引き出しの奥」も印象的でした。
どちらも、古本伝説という感じで、少しホラーっぽくて面白かったです。
作中、こんな言葉が出てきました。本の魅力をズバリ表現した言葉です。
「開くだけでどこへでも連れてってくれるものなんか、本しかないだろう」
さいごに、作者による「あとがきエッセイ」があるのもうれしいです。
「本は人を呼ぶのだ。」・・・まさに、そのとおり!
この短編集は、収録されている全9編が本にまつわる物語です。
本好きには絶対オススメです。特に、若い人たちに勧めたい。
さて、角田光代は、私の中では、鷺沢萠とセットです。私と同じ世代なので。
学年でいうと、角田が私の一つ上で、鷺沢が一つ下になります。
2人とも、1987年に注目を集め、作家としての活動を始めました。
しかし、このあとが対照的です。
鷺沢は、最初からフルスピードで飛ばして、2004年に突然亡くなりました。
角田は、2004年前後からやっとブレイクし、次々と代表作を出しています。
さいごに。(転勤なし?)
今の職場はちょうど10年。そろそろ新しい職場に行っても良い時期です。
しかし今年も転勤なし。希望を聞かれた時、贅沢な希望を言ったためか。