「海の鳥・空の魚」 鷺沢萠 (角川文庫)
海の鳥や空の魚のように、居心地の悪さを感じる人々を主人公にした短編集です。
1987年から1989年にかけて、月間カドカワに掲載された20の作品群です。
角川文庫から出ていましたが、現在は絶版です。アマゾンでは1円です。
高校の教科書掲載の「指」も収録されているので、ぜひ復刊してほしい本です。
自分の居場所にどこか違和感を覚えている人びと。
そんな人びとが、日常の中で、一瞬きらりと輝いた瞬間を切り取った短編集です。
どの作品も10ページ足らずで、あっという間に読めてしまいます。
それでいてどの作品も心が温まり、読んでいてとても元気が湧いてきます。
一番のオススメは、「柿の木坂の雨傘」です。
家を出た娘と、その父親との、微妙な心の揺れを描いた、すばらしい作品です。
「ーー勘当した娘を、家に上げるわけにはいかん」
しかし、父親から借りた自転車には・・・何度読んでも涙が出そうになります。
「ポケットの中」もまた、読むたびに涙が漏れそうになる作品です。
駆け落ちした母を、長年助けてくれたおじいの、ポケットにあったのは・・・
「東京のフラニー」を読むと、自分の大学時代のひとコマを思い出します。
思春期特有の、よく分からない不安と苛立ちが、とても懐かしく感じられます。
ここに登場する名前も分からぬ教授に、むしょうに会いたくなってしまいます。
そして、「フラニーとゾーイー」を、読み返したくなります。
「クレバス」もまた、自分の若かったころを思い出させる作品です。
アメリカ大陸横断を夢見る鉄男に、いくつもの災難が降り注ぎます。
「人生には不運な時期があるよ。雪山のクレバスにはまってしまうみたいなね。
そういうときはなるべく首を縮めて、時間が上を通り過ぎるのを注意深く待つの
さ。次に首を伸ばしたときには、きっと素敵な眺めを見られるものだよ。」
そんなことを言ってくれる名もない伍長にも、会いたくなってしまいます。
そして、鉄男が夢を実現することを願ってしまいます。
「指」は、ガソリンスタンドで働く青年の、微妙な心の動きを描いた絶品です。
ガソリンスタンドで働く喜一。スタンドに入ってきた赤いアウディの男と女。
ライトを付け替えた喜一が、女から代金を取らなかったのはなぜか?
いろいろと考えさせられる作品です。(さすが、教科書掲載作品)
このように「海の鳥・空の魚」には、魅力的な短編ばかりが詰まっています。
読みやすいので、鷺沢萠の本で、最初に手に取ってほしい本です。
しかし、この本が普通の書店には置いてありません。というのも絶版なので。
古本屋の普通の棚にも無くて、100円コーナーにあったりします。実に悲しい。
「海の鳥・空の魚」は「夏の100冊」等に入っても、全然おかしくない本です。
ぜひ復刊して、普通の書店で買えるようにしてほしいです。
さいごに。(スピングルムーブ)
最近雑誌にも取り上げられた、スピングルムーブのスニーカーを買いました。
サイズは1センチ刻みなのに、足にぴたっと吸い付くような感じで快適です。
税込みで21600円。10年履こう。そうすれば1年あたり2160円になる。
と、またセコイ計算をしてしまいました。

(スピングルムーヴ)SPINGLEMOVE spm442-05 スニーカー SPINGLE MOVE SPM-442/ Black
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