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青べか物語

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 「青べか物語」 山本周五郎 (新潮文庫)


 漁師町浦粕(うらかす)に住みついた主人公の視点で、人々の生活を描いた作品です。
 作者が若い頃、浦安に滞在したときのことをもとに描いています。代表作の一つです。

 新潮文庫から出ています。カバーイラストがなかなかいい味を出しています。
 私は20年ほど前に読みました。久しぶりに、パラパラと流し読みしました。


青べか物語 (新潮文庫)

青べか物語 (新潮文庫)

  • 作者: 山本 周五郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1963/08/12
  • メディア: 文庫



 主人公の「私」は、浦粕という漁師町に来て、その景色が気に入ってしまいました。
 海を眺めて散歩していると、ある老人に声を掛けられ、舟を買わされてしまいます。

 この船は、べか舟という種類のボロ舟で、青いペンキで側面が塗られています。
 この青べか舟とともに、浦粕での「私」の生活は始まりました・・・

 部屋の書棚でたまたま目について、「青べか物語」をパラパラと読み返しました。
 私がこの本を読んだのは、かれこれ20年ほど前のことです。

 その頃はまだ、自分流の読書法が確立されてなかったので、本に線が引いてません。
 本文に線が引いてあれば、そこだけ読み返して、話の大筋を思い出せるのですが。

 この物語は、30以上の短いスケッチが織りなされて、一つの作品となっています。
 そのスケッチの中に一つだけ、20年前に〇印を付けた作品がありました。

 「対話(砂について)」という、わずか6ページほどの小品です。
 しかし、これがすごい。初めて読んだ時の衝撃が、今よみがえりました。

 「—砂はただ砂っ粒、これだけのもんだと思ってる、だがそうじゃねえ、これはこ
 れで生きているし、生きている証拠にはおめえ、絶えまなしに育ってるんだぜ」

 そして、そのあとに「富なあこ」という男が述べる考察がすばらしいです。
 こういうことは、なかなか思いつきません。本当に素朴な人間でなくては。

 今回は、目次で気になったタイトルの章を、サクッと読み返しただけです。
 その中で、「毒をのむと苦しい」という話が、とても面白かったです。

 晩飯を食べていると、栄子がやって来ました。特殊なサービスをする女中です。
 「あたし、心中したことがあるのよ、先生」 そして彼女が語ることは・・・

 そのほか、「蜜柑の木」、「人はなんによって生くるか」、「繁あね」、
 「経済原理」、「貝盗人」、「浦粕の宗五郎」などが印象に残りました。

 「私」は、3年間の滞在で、色々な人々と交流し、様々なことを聞きました。
 そして、少しずつ漁師町に溶け込んでいきます。が、最後は・・・

 さて、この作品は、作者が大正15年に浦安に滞在した体験をもとにしています。
 ホントかウソか、「青べか物語」は、浦安の裏ガイドとしても利用できるとか。

 冒頭に、「太陽が二つ、東と西の地平線上にあらわれることがある」とあります。
 今の浦安で、そんなふうにカワウソに化かされることなど、想像もできません。

 さいごに。(先生復活)

 月曜日から娘のクラス担任が、3週間ぶりに復帰しています。
 実は、心臓に異常を感じて救急車で運ばれ、入院していたのだそうです。

 先生がいなかった3週間、漢字がほとんど進んでいませんでした。
 遅れを取り戻すため、最近は毎日、漢字書き取りの宿題がたくさん出ています。

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