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歴史(ヘロドトス)

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 「歴史」 ヘロドトス著 松平千秋訳 (岩波文庫)


 前5世紀のペルシア戦争を中心に、地理や伝説や風俗なども描いた歴史書です。
 本書を記したヘロドトスは、「歴史の父」と言われています。

 岩波文庫から全訳が出ています。初版は1971年ですが、訳は分かりやすいです。
 私の手元にある上巻は1995年第33刷で720円でした。現在は1296円です。


歴史 上 (岩波文庫 青 405-1)

歴史 上 (岩波文庫 青 405-1)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1971/12/16
  • メディア: 文庫



歴史(中) (岩波文庫 青 405-2)

歴史(中) (岩波文庫 青 405-2)

  • 作者: ヘロドトス
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1972/01/17
  • メディア: 文庫



歴史 下 (岩波文庫 青 405-3)

歴史 下 (岩波文庫 青 405-3)

  • 作者: ヘロドトス
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1972/02/16
  • メディア: 文庫



 全9巻で構成されています。
 1~4巻はペルシアの征服活動が、5~9巻はペルシア戦争が記されています。

 「本書はハリカルナッソス出身のヘロドトスが、人間界の出来事が時の移ろうと
 ともに忘れ去られ、ギリシア人や異邦人の果した偉大な驚嘆すべき事蹟の数々 ―
 とりわけて両者がいかなる原因から戦いを交えるに至ったかの事情―も、やがて
 世の人に知られなくなるのを恐れて、自ら研究調査したところを書き述べたもの
 である。」

 この序文に、「この時代を忘れないでくれ」という強い思いが表れています。
 実際、この書物のおかげで、我々は2500年も前のことを知ることができます。

 ヘロドトスは諸国を遍歴して、自分で見聞きした様々な逸話を書き残しました。
 例えば最初に登場するのは、リュディアのギュゲスの興味深いエピソードです。

 リュディアの王カンダウレスは、妃の容色をギュゲスに自慢して言いました。
 「ひとつ妃が着物を脱いだところを見てみるがよい。」

 ギュゲスは命令を拒みきれず、王の寝所に隠れて裸の妃を見てしまいました。
 妃は、隠れているギュゲスに気付き、王の仕業と悟って復讐を誓います。

 妃はギュゲスを呼んで言い渡しました。そなたには、進むべき道が二つある、
 カンダウレスを殺して王になるか、それともここでただちに死ぬか・・・

 刺激的で興味深いエピソードです。
 私はここを読んで、いっきにヘロドトスの「歴史」の世界にはまりました。

 ペルシア戦争へ至る道のりや、戦闘の数々など、物語の大筋も面白いですが、
 このようなちょこっと出てくるエピソードもまた、鮮烈な印象を残します。

 さて、今から10年前の1997年、線引きしながら私はこの本を読みました。
 ちびちび読んだため、400ページほどの本に、1ヶ月ほどかかりました。

 上・中・下の3冊で3ヶ月です。
 その3ヶ月は、紀元前5世紀の世界に、どっぷりつかって生きていました。

 線引きされている部分だけを読み直そうとしましたが、線が多すぎました。
 1巻を読んだだけで1時間。そこで中断しました。9巻だと9時間なので。

 意外なことに、敵国ペルシアについても、人間味あふれる記述をしています。
 ヘロドトスは、敵も味方も公平なまなざしで見つめていたようです。

 さて、岩波文庫版「歴史」は全訳です。松平氏の訳は、割と読みやすいです。
 ただし、地名や人名が次々に登場し、記述も前後するので、若干混乱します。

 詳細な地図を付けたり、人物関係図を各巻に付けたり、注釈を各ページに付け
 たりして、さらに読みやすい工夫を施した上で、新装版を出してほしいです。

 あるいは、新訳版を出してくれたら、これほど嬉しいことはありません。
 もう一度ゆっくり時間を取って、じっくり味わいたい作品です。

 ところで、現在トゥキュディデスの「歴史(上)」を読んでいます。
 ペルシア戦争直後にスパルタとアテネで争った、ペロポネス戦争の物語です。

 この記述がまた詳細で、読んでいてとても時間がかかるのです。
 毎日10ページくらいずつ読んでいるので、1巻読むのに1週間かかりました。

 さいごに。(もう帰って来たの?)

 以前は、仕事から帰るのが遅くなると、「遅いよ!」と怒られたものでした。
 しかし4月から仕事が忙しくなって、毎日のように帰宅が遅くなります。

 それで、たまに仕事を早く片付けて、急いで家に帰ると娘にこう言われます。
 「え? もう帰って来たの?」 「遅い」と怒られていた方が良かった。

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